非日常のとビら
□37日目 わたしはどっちを選ぶべき?
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いままでこんな大胆な行動、されたことなかったのに。
そっと自分の唇に手を添えると、人差し指の感覚がまだ残っている感じがしてまた恥ずかしくなった。
私はこんなに恥ずかしいのに、クロロはどこか満足気なのが憎たらしい。
これをイルミに悟られるのも嫌で、努めて平常心を装おうとしていると、時間は味方をしてくれなかったようでイルミが帰ってきた。
「思ったよりはやかったね。どうしたの?」
「はい、これあげる」
突然渡された袋はふわふわと柔らかくて頭にはてなマークが浮かぶ。
「なにこれ?」
「開けてみればわかるよ」
それもそうかと思い、袋の口を縛るリボンをしゅるりと引っ張った。
中を覗いてみると、そこに入っていたのは。
「くまさん。くまさんだ」
「そう。くまさんだよ」
袋の中から抱き上げるとこのクマの生地はカシミアでできているようで、触り心地がとてもいい。
首元に結ばれているリボンはシルクでできていて、上等なものだというのがなんとなくわかった。
イルミのくれたものなのだからそれが。
大きさは私の腕の中にすっぽり収まるくらいでとても抱き心地がよかった。
「ふわふわだ、すごい触り心地もすき!」
私のことを見ているだけあってこの触り心地は私の好みドンピシャだった。
これはもうさすがとしか言い様がない。
ここまでわかってると不気味だけどイルミはこれがデフォだからなんとも思わない。
もふもふと感触を楽しんでいると、ひんやりとした固いものが手に当たった。
これはファスナーだ。
ぬいぐるみをひっくり返して見てみるとそこには思った通りのものがあって首を傾げる。
ぬいぐるみにファスナーがついているのは珍しい。
それにこれは飾りのものではなくきちんと使えるみたいだった。
イルミの方を見てみても、ただ私を見つめるだけで何も言ってこない。
開けてみろ、という意味なのだろうか。
そりゃあ気になるから開けるけど。
躊躇い無くそれを引っ張り中身を見ると、中から出てきたのは薄手のブランケットだった。
「中にものを入れられるぬいぐるみだったんだ!すごい!」
「これなら持ち歩く時にも邪魔にならないでしょ?使わない時には畳めるし」
これは普通にとても嬉しい。
ブランケット以外にもお洋服や、小物などもいれられるなんて、とっても実用的なくまさんだ。
お礼の気持ちを彼に伝えると、ココナが喜んでくれてオレも嬉しい、と小さく微笑んでくれた。
「寝るときに抱っこするものができてよかったね」
「さすがイルミ、ちゃんと覚えていたんだね…」
確かにハンター試験のときにも抱っこするものを与えられていた気がする。
それをちゃんと覚えているなんてやっぱりさすがとしか言いようがない。
「クロロに強請らなかったんだ」
「だってぬいぐるみなんてそれこそ邪魔になるじゃない?それに無いからといって死ぬわけでもないし…」
ちらりとクロロの方に目をやると、何故だか悔しそうだった。
何故、だなんて白々しいだろうか。
「見てクロロ!可愛いくまさんもらった!」
「……ああ、よかったな」
我ながら現金だけど機嫌はすっかり治ったと思う。
このままぬいぐるみを手に抱いている訳にもいかないので、鞄の中にはまだまだ余裕があるから、とりあえずくまさんをしまった。