ココロ
□9. 初めての暗殺2
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この屋敷、思っていたよりも結構広い。この中から探すのにはかなりの時間がかかってしまう。
私はそう判断しきょろきょろと辺りを見渡すとメイドさんが目に入り話しかけた。
「すいません、主人の部屋を教えてもらえませんか?あっ、私はよろず屋のヒカルと申します。貴女たちを助けに来ました」
少し驚いたようだったが、信じてくれたみたいで、部屋の近くまで案内してくれた。ありがたい。
「ありがとうございました!では、この屋敷の外に出て待機してもらえますか?屋敷から出る時に他の使用人さんに会ったらその人にも伝えておいてください。あっ、もし狼を見ても驚いたりしないでくださいね!それ、私のペットで仕事を手伝ってもらっているんです」
死体のこともあるのでむやみに扉を開けないで欲しいとも言ったのでこれで多少は大丈夫だろう。
「はい、わかりました。ではよろしくお願いします」
深々とお辞儀をするメイドさんに頭を上げてもらいにこりと笑うとメイドさんも笑ってくれたので嬉しくなった。
「これが終わったら家に返してあげるから」
そう言ってメイドさんとは別れ、ターゲットの部屋に普通に入っていく。
「こんにちは!よろず屋ナイトメアです!」
「だ、誰だ!」
声をかけるとびくりと肩を震わせ、過剰に驚かれる。
誰だっていま名乗ったでしょ?
「だから、よろず屋ですよ?」
「よろず屋なんか呼んだ覚えはない。帰れ」
そういう声は少し震えている。何かを察知しているのだろう。
「それは困ります。気づいているのでしょう?これから自分が殺される。ということを」
身体をこわばらせる男に笑顔でじわじわ距離をつめていく。
「どうかしました?早く終わらせて帰りたいんですよ。最後に残したい言葉、何かあります?」
「な、何を言っているんだ!こっちには10人も念能力者がいるし、下にも沢山の「ああ、あの人達ならもういないですよ?」
戯けるような仕草でそう告げると相手の顔はみるみるうちに真っ青になっていく。
「使用人さん達に謝ってから死にますか?」
目の前の男は俯いたまま何も答えない。あくまで謝る気などないようだ。
「そうですか。わかりました」
そう言って、ナイトに合図をだすと、静かにゆっくりと主人に近づいていく。すると、何を思ったか命乞いをし始めた。
「や、やめてくれ!金ならいくらでも出す!だからお願いだ‼」
そういいながら2歩、3歩と後ずさりをする。
「貴方はここの使用人さん達を無理矢理連れてきて働かせていたんですよね?そんなの自分勝手すぎますよ」
主人は壁に追いやられ、剣の切っ尖が喉元にあてがわれた。
「許してくれ、まだ、まだ死にたくないんだ!なんでもする‼だから助け…っっぁ!!!」
あまりにもばたばたとするので、ナイトは綺麗に両足を切り取った。
「あ、足がぁぁ!俺の足がぁぁぁぁぁ!!!」
「煩いです。連れてきた人達はこんなものよりもっと辛かっただろうに…」
そういって腹部に剣を突き立てぐちゃぐちゃと抉ってゆく。人間は以外と頑丈にできているため、お腹を1回刺したところで死なない。ホルモンなどが切れにくいように人間の内臓だって適当に刺したところで綺麗に切れることは無いみたいだった。
呻き声は次第に小さくなっていき、この出血量じゃどのみち死ぬと判断したナイトは抉るのをやめ、こちらへ戻ってきた。ターゲットは痛みで体が痙攣している。
あの状態でとどめを刺してもらえないのは辛いだろう。少しでも後悔しているといいな。
くるりとナイトさんの方を見ると、お礼を言う。
「ありがとうナイトさん。静かになったね。散々人には酷い事をしておいて、自分は命乞いか…でもこれで少しは痛みをわかってくれたかな。ナイトさん疲れてない?もう帰っていいよ!」
「はい、では帰らせていただきます。さよなら」
ぺこりと頭を下げられたので、こちらも頭を下げる。
「うん、ナイトさん今日は助かったよ」
そうしてナイトは絵画へと帰っていった。全部燃やしちゃう予定だったけどあの絵は持って行こうかな。よし、次は使用人さん達をお家に返してあげなきゃ。
ふぅ、とため息をつき、気合を入れなおすと、扉を開けると狼がいた。
「わあ!どうしたの?」
「いえ、さっきまで話し声が聞こえていたのでまだ仕事中かと…」
「あっ、ごめんごめん。もう終わらせたよ。奥の方の死体処理お願いね。使用人さん達をお家に帰してあげたらリンゴね」
りんごくらいあるよね。なかったら買いに行って食べさせてあげてから帰ってもらおう。
「わかりました!気をつけてくださいね!」
あれだけ食べてもらったのに、リンゴを食べるお腹はあるのか。
そんなことを思いながら外へ向かった。