ココロ

□17. 高低差がありすぎると耳キーンってするけど受験生はみんな鍛えられてるんだね。
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私達は美味しいゆで卵を食べ終わるとまた飛行船に乗り込んだ。

ネテロさんから説明があるようで一つの場所に集められる。
ギルが居ないことを不審がられたししないかな?と思ったけれどきっとみんな自分のことで精一杯でそこまでは考えない…はず。

何か言われたとしてもさっきの崖のところから居なかったのだからその時に奥で休ませていると言い訳すればいいだろう。


「残った42名の諸君にあらためてあいさつしとこうかの。わしが今回のハンター試験審査委員会代表責任者のネテロである」


ネテロさんの自己紹介が終わり、朝8時まで自由に時間をつかっていいと言われた。
自由にする時間があることは分かっていたけれどこれからどうするかなんて全く考えていない。
強いて言うならジンにゴンのことを報告する。それだけだ。
報告するにはまず手紙を書く場所へ向かう必要があるため、廊下の方に向かおうとした時、とんとんと肩を叩かれた。


「お前さんがヒカルかね?」

「そうですけど?あれ、私なにかやらかしましたか?」


こんな人に呼び出しをくらうなんて何か私は悪いことをしただろうか。
念能力で一次試験を切り抜けたことかな?
試験官に喧嘩を売ったことかな?
それともクモワシの卵をとる時にヒソカの念で助けてもらったこと?
うわあ、心当たりがいっぱい。


「いや、そうではなくてのジンからヒカルには飛行船で部屋を与えるように言われたとったんじゃ」


どれも違ったようだ。良かった。とほっとしながらもジンがそんなことを言ってくれていたのか…と全てにおいて抜かりのない彼に感嘆のため息がでた。


「これが鍵じゃ、安心してつかっとくれ」

「すいません、ありがとうございます」


そうしてネテロと別れると、手で貰った鍵をいじりながらこれからするべきことを頭で整理する。

最優先事項は報告だ。他のことはそれから考えよう。

今日のゴンの様子を魔法陣から取り出した紙とペンで書き、誰もいない事を確認してから魔法陣の中に上半身だけ入りジンに手紙を渡す。

「ジン!はいこれ。ジンの言ってた通りゴンいたよ!あと部屋ありがと!」

「おう、ありがとな。てか覚えててくれたんだな。部屋?ああ!気にすんな!」

「覚えてたんだなって忘れるわけが無いでしょ?」


ジンは私の数少ない友人の一人だ。
友人の頼みを忘れてしまうほど私は白状ではないぞ。
それに彼は私の友人の中ではかなりまともな…いや、気のせいだった。

やっぱり俺の勘はあたっていただろ?と嬉しそうに笑う。
手紙を見つめる瞳は我が子を思う親の目をしていた。


「そうだね。ジンの言う通りだった!まだまだ話したいけれど今飛行船の中だからまたね」

「ああ、よろしくな」


あの優しい空間に私は邪魔者だろう。
私はジンにまたねと手を振ると船内に戻ってきた。
よし、まずはこれでOKか。
これからどうするかの案は飛行船の中ぶらぶらしながら考えよう。

受験生はみんな疲れているようで壁にもたれて座っている人が多かった。

ゴンとキルアと一緒に飛行船内を探検して原作を追うかギルに構ってもらうか、クラピカ達のところに行くか…確かあっちにはトンパがいたはずだからあえてトンパにちょっかいをかけるのも楽しそうだ。
でもせっかくのハンター試験なんだからここでしか出来ないことをしたいなあ。

少し歩いていると何処からとも無く、「くくくくく」という声が聞こえてきた。

こっちルートもあったか…なんて思いながら声を辿っていくとやはりそこにはヒソカがいた。


「ヒソカ気持ち悪い」

「ヒカルじゃないか♣はじめの挨拶がそれかい?」

「1人で笑ってたら変態だと思われるよ?あっ、もう思われてたね!」


もう手遅れだったよ。忠告しても変わらないだろうから何も言わないけど。
こいつ他人にどう思われようと関係ないだろうし。

周りの受験生はヒソカのキモい行動のせいでドキドキしているようで顔が青ざめていってる。


「ほら、ヒソカの行動気味悪いから周りの人が引いてるよ?」

「ヒカルがボクに悪口言うからだよ♦」

「えっ、悪口に聞こえた?気を悪くしたなら謝る…」


別に貶した訳ではなかったので素直に謝るとそういうことじゃないよなんてケラケラ笑われた。
ヒソカが私の言葉なんて気にすると思ってないからこれが当然の反応だと思う。
ヒソカがこんなことで傷ついてたら普通に引くよね。


「あ!」

「どうしたんだい?」


ちょっと大きな声が出ちゃったとは思うけれど受験生達は私の行動のひとつひとつにビクビクしているように見えた。
私は他の受験生に対して全く危害を加えてないのに…


「いや、私ギルにリンゴあげてないなって思って」


ヒソカの方に駆け寄り、ほかの受験生が見ていないことを確認してからギルを召喚して魔方陣からリンゴを取り出す。
受験生は私に怯えて目を逸らしてるからギルが何処から来たかなんか深く考えないだろうけど。


「ヒカルの作業は早いね♥」

「そりゃどうも。はい、ギル。リンゴだよ」


しゃくしゃくといい音をたててギルはリンゴを食べていく。
リンゴって美味しいよね。
私は人間の咀嚼音は好きではないけれど動物の咀嚼音は好きだ。
なかなかいい音を出して食べてくれるから程よくかたいものをあげたくなる。


「ところで、なんでリンゴなんだい?」

「ギルが好きなんだよ。報酬みたいなもの?」

「念に報酬か…♣」


「ヒカルは優しいんだか可笑しいんだか♠」なんて言われたけれど、ギルにだって心があるんだからこれが普通じゃないのかな?

ギルを撫でている所をヒソカに観察されながらそんなことを考えた。
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