ココロ
□19. 閉ざしていた過去
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痛みが引いてきて顔をあげると針をとったイルミが心配そうに様子を伺ってくれた。
「大丈夫?痛みは引いた?」
「うん。大丈夫。今日はついてないみたい」
笑っては見たけれどもここまで付いていないのは普通に笑えない。
ずっと待っていてくれたのがイルミだったということに少し驚いた。
自惚れかもしれないけれどなんだか私に甘い気がする。
それはヒソカにも当てはまる。
私はそんなに優しくしてもらえるような人間ではないのに。
「じゃあ行こうか、残り時間は…71時間、まだまだ大丈夫だね」
嘘!1時間も悶えてたの!
「イルミなんか足手まといでごめん」
「なにが?それより気をつけて歩いてね?オレ、ヒカルが苦しんでる姿より楽しそうにしてくれてたほうが気分がいいから」
「気分がいいって…」
私はイルミのペットかよちくしょう。
優しいんじゃなくて玩具にされてるのはわかってましたよ。
「とにかく、怪我には気をつけてね」
そう言って走り出すイルミのあとを私はただついていった。
走っている間、いろんなところから弓とかナイフとかが飛んできたけれど軽々とよけることが出来た。
軌道が見える!見えるぞ!と少し某大佐のような気持ちになり、なんだか楽しい。
当たったら痛い、当たりすぎると死ぬというスリルもあるためドM向けのアトラクションみたいだった。
私はMではないけれど。
「そういえばヒカルはちゃんと走れるのになんで一次試験のときに走らなかったの?」
「えー?疲れるから?」
極力体力を使いたくないのは事実だ。
気分的に走らなかっただけだから特に理由はない。
学校の持久走とか嫌いだったから気分的に嫌なのはそのせいかもしれない。
「これだけのスピードで走ってるんだから普通の人なら30秒もたないよ。オレとかヒソカとかそこらへんじゃないとこのまま走っているのは無理だね。まぁ、ヒカルはまだまだ余裕そうだけどね」
そんな会話をしながら走っていると上から白い粉が落ちてきた。
このまま火をつけられての爆発に身構えたけれどそうでは無かったようで安心した。
「うわあ!何これ!」
毒に体制のあるイルミは体に付着した粉を指ですくい取り舐めてみる。
これは、
どさり、と後ろで崩れ落ちる音がした。
後ろでヒカルが力なく崩れる。
そういえば彼女に毒の体制はなかった。
「ヒカル?ねえ、ヒカル」
いくら揺すってもヒカルが起きることはなかった。