薄桜鬼 逆トリップ 斎藤
□運動会
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それを見た母親は顔色を変え、その場から立ち去ろうとした所
「待て・・・あんたは、一也とすみれに言う事があるだろう」
斎藤さんが引き留めて静かに声をかけた。
静かな口調ではあるが、怒りを含んでいる事がわかる。
「悪かったわね・・・」
小さな声で吐き捨て、今度は本当に去って行った。
「一也、落ち着いた?」
「姉ちゃん、いつだって言われっぱなしで、悔しくて、だから俺」
「うん、ありがとう。私の為に言ってくれたんだね」
小さな子をあやすように頭を撫でると少し照れくさそうに笑った。
「さ、午後の競技、頑張ってね」
「うん、俺、紅白対抗リレーの選手なんだ・・・あっ、体育委員の仕事っ!」
慌てて自分の持ち場に走って行った。
「優しくて強いな、一也は。すみれによく似ている」
一也の背中を見ながら斎藤さんが呟いた。
「斎藤さん、ありがとうございます。私だけだったら一也を簡単に笑顔に戻せなかった。正しい事を言わせてあげられて良かった。それにあんな形でも謝って貰えて良かった」
「そうか?なにかした覚えは無いが、役に立ててたのなら何よりだ。・・・片付けるか」
リレーは前走者たちが早かったので一也もトップを維持したまま次へと繋ぎ一也が居るチームが一位になった。
「あーあ、見せ場が無くてつまんなかった」
なんとも贅沢な事を言うので
「リレーは皆の協力でしょ?自分が目立ちたいとか考えないのっ」
笑いながら返すと
「俺だって、カッコ良いところ見せたいもん」
少し膨れて呟いた。