□嘘
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※ゆかり視点


「お前を妹のように思った事は一度も無い」
珪君から言われた言葉。

多分、私の為についていた嘘。
そしてずっと私は珪君を傷つけていたのだろう。
妹のように思ってくれていると勝手に信じて甘えていた私。

「嘘、つかせてごめんね。気が付かなくてごめんね」

私はどうすれば良いのだろう。
甘えてしまいたい。でもここで甘えればまた珪君を傷つける。そんな事はできない。

珪君の腕の中から出ようとすれば、珪君の腕に力が入る。
珪君の体温が心地良い。

「今だけでも、甘えてくれ。お願いだ」

なんでこの人はこんなに優しいのだろう。

珪君を見上げれば、優しい瞳に吸い込まれそうになる。

「もう、無理するな。俺がお前の傍に居る。
お前の涙が止まるまで、ずっと抱きしめていてやる。
お前の悲しみは全部俺が受け止める。
だからゆかり・・・俺の所へ来い」

そう言うと私の唇に優しいキスが降りてくる。
撮影の時のそれとはまるで違う想いが込められたもの。

「愛してる・・・お前の全てを」

でも私は珪君に甘えてはいけない気がする。

「だめだよ、私、珪君に甘えられない」

そんなずるい事、出来ない。

「俺が、そうしたいんだ。
好きな女が倒れそうなの、見てられない」




その日の夜、珪君は本当に帰らなかった。

結局私は、珪君に抱きしめられたまま眠る。

「お前が俺を受け入れるまで、これ以上はしないから」

そう言いながら私にキスを落とす。

自分の弱さ、狡さが嫌になる。
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