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□バレンタイン
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瑛が帰ってきてから一週間以上が過ぎた。瑛は相変わらず女の子達に冷たく、以前の羽学プリンスの面影は無い。
なのに、私とは仲の良い友人として親しくするので、女の子達の視線が突き刺さる。
「ゆかりちゃん、チョコどうする?」
「チョコ?」
「もうすぐバレンタインでしょ?」
そういえば、そうだった。珪君には当然あげるとして、瑛はどうしよう。
あげるとしたら、友達として?それとも・・・
時々自分の気持ちが分からなくなる。
そしてバレンタイン当日。
一応チョコを用意しちゃったけど。
なんて言って渡せばいいのか悩んでいるうちに時間は過ぎ帰る時間になってしまった。
――仕方ない、珊瑚礁に持って行こうかな――
「ゆかりさん、ちょっと良いかしら?」
階段を降りようとした時、瑛の取り巻きの子達が声をかけてきた。
「佐伯君の事なんだけど」
はあ・・・・またか、最近瑛が相手しないから私に色々言ってくる子が多い。
「佐伯君、今年のバレンタインのチョコ、誰からのも受け取らないんだけど、どうしてか分かる?」
――分からないよ、そんなの――
「ゆかりさんのは、どうなの?」
探るような顔で聞いてくる。
「渡してないから」
「えー渡さないのぉ、元カノなのに?」
嬉しそうに言う姿に少しムカッとしたけど相手にするのも面倒。
「後で渡そうかなって思っていたら、今になっちゃっただけ」
「ふうん・・・・そうなんだ。自分のは受け取って貰えるって思ってるんだ」
彼女達から冷たい声が聞こえた。
「そ、それは分からないけど・・・誰からのも受け取ってないって知らなかったし」
「ま、良いわ。きっと元カノのゆかりさんのだけは受け取ると思うけど・・・・・まさか、付き合ったりしないわよね?」
そんなの関係無いじゃない?とは思うけど集団で囲まれて言われると怖い。