薄桜鬼 トリップ
□自分を守る為
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「流石に、木刀では重いであろう。
これを使うと良い」
そう言って竹刀を渡された。
「あの・・・どうやって構えれば?」
「そこからか」
「はい・・・すみません」
「謝る必要は無い。基本から出来るのは良い事だ」
斎藤さんに教わりながら、竹刀を構え素振りをする。
「もう少し肩の力を抜け。だが、握る手は緩めるな」
時折、言葉を発しながら私を見つめている。
斎藤さんの指導を受けるようになってから10日程が経過した。
「さくら、あんたは剣術を習った事は無いのだな」
今更のように言われ思わず
「上達しませんよね。すみません」
元より、運動神経が鈍いのは承知しているので恥ずかしくなる。
「いや、そうでは無い。逆だ。未経験にしては上達が早いと思ったのだ。太刀筋も良い」
「本当ですか?」
「嘘を言う必要は無いだろう。
義兄の練習を見に行った事くらいはあるのか?見るだけでも良い稽古になる。しかもあの腕を思うと良い師であるのだろう」
「いえ、道場に伺った事はないです。
先生には、お会いした事がありますけど」
「ほお・・・その師もここに居る者と似た人物なのか?」
「近藤さんです」
そこまで話していると
「近藤さんがどうしたのさ、それに一君とさくらちゃん2人仲良くなにしてるの」
沖田さんが木の陰から現れた。
「総司、俺たちは剣術の稽古をしているだけだ」
「沖田さん、こんにちは。今私の兄が誰から剣術を教わったのかと言う話をしていたんですよ」
「ふうん、それで近藤さんがなんで出て来るわけ?」
「私の居た世界にも近藤さんにそっくりの近藤さんがいらっしゃって、一さんはその方の道場で剣術を学んだという話です」
「へえ、そうなんだ。
君の世界の近藤さんってどんな人?」
クリスマスの日に会った、優しい顔を思い浮かべる。
「一度しかお会いした事ないですが、とても温かい、素敵な方です」
私の言葉を聞くと沖田さんは少し嬉しそうに言う。
「そっか、君の世界の近藤さんもすごい人なんだね」
沖田さんは、本当に近藤さんが好きなんだという事が伝わってくる。