GS逆トリップ(瑛)
□夢にかける思い (瑛)5
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「佐伯君、見つかりました」
卒業が明日に迫った日、
色々な書類を受け取りに大学に居た俺に若王子が声をかけてきた。
「明後日の明け方、彼女が居る場所と繋がります」
「俺の部屋が、ですか?」
「正確には、佐伯君の周りが、です。
ただし、この次はいつになるか分からない。無いかもしれない」
その言葉が意味するのは、これが最後のチャンスなのかもしれないと言う事。
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卒業式の次の日の明け方、つまり名無子と再会が出来ると若王子が言った日、俺は用意をして部屋に居た。
若王子は俺の周りが名無子と繋がると言ったけど、この前は行きも帰りも俺の部屋だった。だから他は考えられなかった。
この前とほぼ同じ時間、窓の外が急に明るくなる。
朝日・・・と言う訳では無さそうだ。
多分、この部屋の何処かが名無子の部屋か店と繋がったに違いない。
そう思い自分の部屋のあちこちを確認する。そう言えば俺は水を飲みに起きたんだ、と台所にも行くが名無子の部屋らしき場所は見当たらない。
「クソッ。何処なんだよ?」
呟きながら窓の外を見れば、昨日までとは違う景色が広がっていた。
「マジ、かよ」
急いで外へ行き、記憶を頼りに目的の場所へ走る。
「あった・・・・」
手の中の携帯で時間を確認する。
この時間の通りなら、まだ寝てる筈。
手にした鍵を鍵穴に差し込み回すとカチャリと音がする。
疲れて眠っているだろうから、静かに目的の部屋に入る。
あれから、どれだけ時間が過ぎたのか俺には分からない。
だけど目の前で眠る彼女は別れた日と変わっていない。
「ただいま、名無子」
小さな声で言い寝顔にキスをすれば、うっすらと目を開けた。
「え・・・瑛?」
「ああ、約束、守りに来た」
「お帰り、会いたかった」
「俺も会いたかった。なあ、俺が帰ってからどれだけ経った?二次会はどうなった?」
「あれから3ヶ月経った、二次会は2週間後」
驚いた事にそんなに経っていない、やっぱり俺の世界と時間の流れが全く違う。
しかも二次会に間に合って良かった。
「また気が付いたら店に居たの?」
「違う。今回は俺の家ごと・・・いや、もしかすると俺の世界ごと来たんだ。鍵、使ったんだ」
「本当に?」
「ああ、窓の外見て驚いた。しかも・・・此処からの風景も前と違う」
俺の言葉に名無子は外を見て驚く
「海、近いね」
「羽ヶ崎の海だ。俺の場所と名無子の場所が繋がったんだ」
2人の時間と場所が同時に動き始めた。
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