薄桜鬼 現代 斎藤妹

□妹との出会い
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「一、話がある。書斎に来なさい」

親父に呼ばれ面倒だが、無視する訳にもいかず書斎へと足を運んだ。
そこには親父と1人の少女がいた。

「実は古い友人が亡くなって訳あってそいつの1人娘をうちで引き取る事になった。
名前はさくらという、歳は14歳だ。お前の妹となるのだから可愛がってやるように」

少女は俯きながら小さな声で

「よろしくお願いします」

と言った。

「ああ、よろしく」

急に妹が出来た訳だが、何も出来ないような歳でも無いので俺の生活に変化はないであろう。
とその時は思った。

「部屋お前の隣が空き部屋になっているからそこにする。荷物は明日届くから色々世話してやるように」

そう言ってさくらを俺のほうにへと促した。

「案内する・・・来い」

さくらはキャリーバッグを一つ持って俺の後をついてきた。

「貸せ」

小柄なさくらに不釣合いなキャリーバッグを手に部屋へと向かった。

空き部屋とは言えベッドはあるので一晩過ごすには不自由ないであろう。
そう思い部屋にキャリーバッグを置き出て行こうとすると

「あの・・・もう少し一緒に居て下さい」

蚊の無くような声がした。

「どうした?怖いのか?」

よく考えれば、身内が亡くなり初めての家で1人きりは心細いのだろう。

「良い。気が済むまで一緒にいてやろう・・・
いや、俺の部屋へ来い」

この殺風景な部屋では、寂しいであろう。


自室へ連れて行きソファーへと座らせた。

さくらは黙って黙って座っている。
気の利いた事を言ってやりたいが、なんと声かければ良いのか?皆目検討がつかない。

「小学生か?」

「違います。中学生です」

「学校は転校する事になるのか?」

「いえ、私立でそう遠く無いので、ここからでも通えます」

「私立?なんという学校だ?」

「桜花女学園です」

お嬢様学校で有名な学校だ。

お互い何も知らないのも不都合なので、少し話を聞く事にした。

亡くなった父は製薬会社の社長だったそうだ。
亡くなる前1年位は出張と言ってずっと家を空けていたので「死んだって実感が無いんですよ」と寂しそうにつぶやいた。

1年もの間1人で生活していたのか。
・・・だとすると1人で部屋にいるのなんて慣れているのではないか?

でも、中学生が1人で生活なんて色々不都合があっただろうと思い聞いてみると

「近所に一緒に会社を興した方がいて、その方が色々世話して下さっていました」

そういう家があるなら何故今回引き取るのは我が家なんだ?と疑問がわいた。
さくらにその疑問が伝わったようで

「あ・・・もちろんそこの家で私を引き取りたいと申し出はあったそうなんですが・・・そこの家には若い男性がいて・・・」

「俺も若い男だと思うが?」

「そうなんですが、その方私と結婚すると言ってきかなくて、私はそれは・・・・」

結婚?ガキ相手にか?

「そいつが嫌だから、ここに居ると思って構わないのか?」

彼女が小さく頷いた。

「会社はその方についで頂く事で結婚は諦めて頂こうと父の秘書に頼んであります」

「なんて言う奴なんだ?」

軽い興味で聞いてみた。

「風間千景さんという方です」

「そいつの歳は?」

「21歳だと聞いています」

俺と同じ歳でコイツをそういう目で見ているというわけか。

そう思いさくらをよく観察した。

小柄で幼い顔立ちをしている。とはいえよく観察すると身体つきは、自分の同年代と変わらないようには見える。
受け答えはおそらく歳よりしっかりとしているのだろう。

恋の相手としては、歳が離れてはいるとは思うが無いともいえぬのか・・・。

「もう遅い。俺のベッドで寝れば良い」

「え?でも私が使ってしまったら齋藤さんが困ると思います」

「大丈夫だ問題ない。あと、お前も今日から齋藤なんだろう?その呼び名はオカシイと思うのだが?」

「そうですね。でもなんと呼べば・・」

「慣れるまでは好きに呼んで構わないが?」

「すみません・・・慣れるまでだけ齋藤さんと呼ばせてください」

好きに呼べと言ったのだから、仕方がないだろう。
そして

「やっぱり隣の部屋で寝ますね」

そう言って部屋から出て行った。
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