薄桜鬼 現代 斎藤妹

□本心
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さくらが俺の家で暮らし始めて3か月が過ぎた。
引っ越しは丁度夏休み中だったので一緒に過ごす事も多く、思いのほか早く馴染む事ができた。

しかし俺のの事はまだ名字で呼んでいる・・・
慣れるまで。は仕方が無いとは思ってはいるが、総司の『自分の家じゃ無いって言ってるみたい』と言う言葉を思い出す。
まだ自分の場所とは思えないのかも知れない。

ある日の事、俺が休みだからと玄関で見送った。

「行ってきます。
良いですね。誰かに行ってきますを言って、自分でカギをかけずに出るって」

さくらは笑顔で言いながら学校へと行った。

さて偶にはゆっくり・・と思っていると電話が鳴った。

「あ、一くん?今日さ、休講が重なって1日休みだよね?ちょっと頼まれてくれないかな?」

総司の頼みは碌な事ではないであろう。とは思ったがおそらく断られるという選択肢は奴には無いであろう。

「さくらが帰宅するまでの時間なら大丈夫だ」

今日は俺が1日家にいると言ってある故、カギを持たずに出た可能性がある。

「うん、さくらちゃんの帰りって夕方だよね。大丈夫だよ

それならば、と出掛ける準備をした。



「・・・・・用というのはこれだったのか」

ペットフードの宣伝販売だった。
キャットフードを配り規定数売れというバイト。

「そう、バイトのピンチヒッター。
3時までの約束だからさくらちゃんの帰りに間に合うでしょ?
それに早めに規定数を売ればバイト代そのまんまで早くに上がってOKなんだよ」

「・・・・3時までに売れなかったらどうするのだ」

「それは、全部売れって・・・でもダンボール1箱だからすぐだよ」

「需要が低く売り切るのは難しいのではないか?」


そんな俺の感は見事に当たり・・・というより当然の結果、規定数を売り切ったのは7時を過ぎていた。

遅くなってしまったのでさくらがカギを持っている事を祈りつつ家路を急いだ。

慌てて帰る俺の後を総司が追う。

「一くん、なんでそんなに急いでいるのさ」

「さくらがカギを持たずに出かけたような気がするのだ」

「え?でも小さな子じゃないんだからどこかの喫茶店とかで時間を潰しているかもよ」

「桜花女学園は寄り道禁止な故、アイツはそのような事はせん」

文具を買うにも一度家に帰ってくる真面目なさくらが時間潰しの為に店に入る訳がないのだ。

家の前に来ると、電気はついていなかった。

やっぱりか・・・・
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