薄桜鬼 現代 斎藤妹

□誕生日
1ページ/8ページ

外から除夜の鐘の音が聞こえて来ている。

台所ではさくらが何か作っているようだ。
「絶対に見ないで下さいね」
などと、昔話に出て来るような言葉を俺に残し籠っている。

そして・・・・・

「総司、なんでこんな日にまでお前がウチにいるんだ?」

「そりゃあ、新しい年をさくらちゃんと一緒に迎える為に決まってるでしょ」

「普通、新しい年は家族で迎えるものであろう」

「良いじゃないか、沖田君とは長い付き合いなんだから、家族も同然だ」

親父が俺たちの言い合いを笑っていさめる。

「そうそう、将来、本当の家族になる可能性もあるでしょ?」

「そんな事は絶対にあるわけ無かろう」

さくらにお前は絶対にダメだ。

「もうすぐ、年が明けるというのに、さくらはいったい何をしているんだ?」

そう呟き部屋のドアに近づくと

「さくらちゃんの所へ行っちゃダメだよ、一君。
さくらちゃんにも兄様が来ないように見張っていて下さいって頼まれているんだから」

総司が言い終わるのと同時に部屋のドアが開けられ、甘い香りが部屋に入ってきた。

そしてさくらが現れ

「そろそろかな?って思ったんですけど?」

親父の方を見ながら言うと

「ああ、良い頃あいだと思うよ」

親父が頷いた。


「では・・・・」

そう言って一旦部屋から出たと思うとすぐに戻ってきてケーキを差し出し

「お誕生日、おめでとうございます!
・・・はじめ兄様」

「これを、用意していたのか?」

「はい、元日生まれで、滅多にケーキで祝う機会が無いと聞いたので作ってみました。
デコレーションは作った事がないので、チーズケーキにしちゃったのですが、お嫌いでしたか?」

さくらが少し赤い顔で話す。

「否、好きだ。それに嬉しい」

「さくらちゃんのチーズケーキか。
ひょっとして、お母さん伝授のアレかな?」

横で親父が聞く。

「はいっ。おじ様覚えているんですか?」

「ああ、何度か2人で作ってくれたね。
まさか、また食べられるとは思わなかったよ」
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ