薄桜鬼 逆トリップ 斎藤
□運動会(後編)
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※斎藤視点
運動会の日の夜、同じ部屋で枕を並べている一也から声がかかる。
「斎藤さん、今日はありがとう」
「俺も一也が走るのを見て楽しんだ」
「運動会に来てくれたのもだけど、俺の気持ちを分かってくれたから、俺すげえ嬉しかった」
「そうか」
改めて一也が心の優しい人間であると感心をした。
恐らく亡くなった2人の母がそしてすみれの育て方が良いのであろう。
「斎藤さん、これからする話姉ちゃんには内緒だけど聞いてくれる?」
「ああ、すみれに言わなければいいのだな」
姉への愚痴だろうか――と軽く考え話を聞く。
「俺と2人きりなった頃・・・母さんが死んだ頃。姉ちゃんにはさ、すごく仲の良い恋人が居たんだ」
「恋人?」
恋仲の男が居たという事実に自分の心がチクリと痛む。
「そう、彼氏。その人とさ夜・・・って言っても夕飯に間に合う位の時間に歩いているのを知り合いのおばさんに見られて、色々嫌味を言われたんだ。
その直後その彼と別れたんだ。すごく良い人だった俺、よく遊んでもらってさ」
寂しそうにも辛そうにも取れる声音で一也が話す。
「その嫌味の内容がさ、小学生を育てるっていうのに男と遊んでとか子どもを育てる自覚ないとかだったんだって」
「何故、一也がそれを知っている」
すみれに内緒という事は一也が知っているはずの無い話なのだろう。
「その時に一緒に居た彼氏に今日の帰り、会ったんだ。運動会も少し見ていたって・・・」
「なにっ?」
「姉ちゃんには会ってないよ。
俺に姉ちゃんを護ってやれなくてゴメン。それと姉ちゃんに感謝してこれからはお前が護るんだぞ、って言いに来たんだ」
――それだけを言いに一也に会いに――
「もしや、その男まだ、すみれを?」
好きなのでは?と思えば