□別離
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ある日の夜、瑛からの電話が鳴った。


――そう言えば、今日学校休んでメールしたな――

『もしもし・・・あ、俺・・・今、良いか?』

携帯特有の雑音が混じる。

「うん、平気。どうしたの?」

『ああ、うん、えーと』

いつになく歯切れが悪いのを黙って待つ。

『あのさ、俺、実家に戻ったんだ。バリスタもさ、今やることじゃないって思って・・・』

「え・・・・」

『お前とチャラチャラ遊んでるのもやめたかったし、いい機会なんだ。学校も転校したから、もう会う事もないだろ』

「うそ・・・だって、瑛の夢は・・・」

『ガキみたいに夢ばかり追いかけるのはやめるんだよ。親が選んだ大学をこっちで目指す。今からなら充分間に合うからな』

淡々とした口調のようにも自分を誤魔化すような口調にもとれる様子で瑛が話す。

――今、貴方はどんな顔で話しているの?――

「嘘、だよね?だって、瑛は珊瑚礁が大好きで・・・」

『やめろよ、放っておいてくれよ。俺だって・・・・もう、良いんだ。決めたから』

――今、何を言いかけたの?――
でも言葉が出ない。

『もう、お前とは会えない。じゃあなっ』

そして電話が切れ電子音だけが耳に届いた。


「もう会えないんなら、じゃあな・・・なんて言わないでよ・・・」

涙が溢れ零れ落ちていく。

でも悲しいのか、泣きたいのか自分でも分からない。

でもやっぱり信じられなくて、珊瑚礁へと走る。

――本当は珊瑚礁にいる筈。だって瑛の大事な場所だから離れる筈ない――
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