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□声を聞きたくて
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※瑛視点
そう言えば、明日は羽学の文化祭だな・・・
夜ベッドに寝転がりながら、ぼんやりと考える。
――ゆかりはどうしているだろう――
携帯のゆかりの写真を見つめる。
見ているうちに無償に声が聞きたくて溜まらなくなってくる。
俺から手を離したのに・・・
最後に聞いたのは泣き出しそうな声。
あの後、ゆかりは泣いたのだろうか。
たまに来る針谷からのメールでゆかりが続けて休んだ事を知った。
『ゆかり、倒れそうだぞ。早く戻ってやれよ』
近況の最後に着けられたひと言。
気にならない訳がない。
でも、どうする事も出来ないんだ。
考えれば考えるほどに聞きたくなる声。
――少しだけ――
電話帳を開き、ゆかりの名前を選ぶと発信ボタンを押した。
暫く鳴る呼び出し音が途切れ、相手が電話に出た事を知る。
「もしもし・・・俺・・・」
「・・・はい・・・」
受話器の向こうからゆかりでは無い声が聞こえた。
この声は―――
「・・・葉月さん・・・ですね?」
なんでこんな時間にゆかりの携帯に葉月さんが出るんだ?
「佐伯君、だね」
「・・・はい・・・」
頭を殴られたような衝撃を感じながら返事を返す。