薄桜鬼 山崎さんと私(短編)

□あめふり
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――雨は、好きになれない――

雨の音を音楽のように言う歌やデートの日が必ず雨なんて歌もある
だけど私は、雨を好きになれない。

それに・・・

「どうかしたのか?」

窓に当たる雨粒を見つめていると烝さんから声がかかった。

「ん?雨・・・よく降るなぁって」

「そうだな、梅雨だからな」

「もう3日間ずっと雨」

「だから部屋の中に洗濯物が揺れているんだな」

烝さんは答えながら私の横に来て一緒に窓の外を眺める。

「雨って好き?」

「考えた事ないな」

他愛の無い会話が続く。

「あめ あめ ふれふれ かあさんが・・って歌あるじゃない?」

「ああ、童謡の・・・迎えに来る歌だろう?」

「私、あの歌嫌い。迎えに来て貰えた事無いからかな。
それに後半でお迎えに来て貰えない子に「この傘使いたまえ」ってすごい上から目線の歌詞が悲しくなるんだよね」

烝さんは私の言葉を黙って聞いている。

「小学生の時にね、大雨で学校が親を呼び出した事があるんだ。
うちの親だけ来なくってさ、先生が家まで送ってくれて・・・寂しかったなぁ」

小さい頃の事を思い出しながら話す。

「他にもすごい雨の日、昇降口で迎えに来ているお母さん達を見て子ども心に羨ましく思ったりしてね」

少しの笑顔を作って烝さんを見ればそっと抱きしめられた。

「これからは、俺が君を迎えに行くから寂しくはない」

「うん・・・」

烝さんが迎えに来てくれるようになったたら「あめふり」の歌を好きになれるような気がする。






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