GS トリップ1

□バイト仲間・・そして(Side瑛)
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ゆかりが珊瑚礁でバイトを始めてしばらくたった日の事だった。

俺はとにかく苛立っていた。

帰ろうとしたら、ゆかりの友達の海野に呼び止められた。
「ごめんね。僕、急いでいるんだ」
苛立ちをなるべく隠して答えて、通り過ぎようとした。

「ちょっと待ってよ、佐伯君。ゆかりちゃんの事なんだけど」
追いかけてきながら言ってきた。

《え?ゆかり?》思わず立ち止まった。
そうしたら、海野がぶつかってきた。・・・・しかも口に・・・。

「ちょっ、お前、今っ!」

気のせいじゃなければ今、口と口がぶつかったよ・・・な。

「え?今?」

海野は何を言ってるのか、わからないようだ。

「事故だよ、事故。忘れろよ。・・・とそれと、ゆかりには言うなよ絶対」
ゆかりにだけは、知られたくない。誤解もされたくない。

「え?ゆかりちゃん?ね、佐伯君ってさ、やっぱりゆかりちゃんの事が好きなの?」

「・・・やっぱり、ってなんなんだよ」

学校では親しくしてる覚えはないぞ。

「うーん、佐伯君いつもゆかりちゃんの事を見てるから、私もゆかりちゃん大好きだからわかっちゃうんだよね。同じ人を好きな人なんだぁ・・ってね」

はぁ?俺がいつもゆかりを見てるって?そんな事は無い・・事はない・・のか?

「それより、佐伯君来週の日曜だけど空いてるかな?遊園地に行こうかと思ってるんだけど」

「なんで俺がお前と。行かない。興味ない」
忙しいんだよ、俺はっ。と言いたかった。
「ふうん、私の他にゆかりちゃんと志波君も誘ってあるんだけどな。じゃあ他の男の子誘おうっと」
え?ゆかり?それに男もいるのかよ。

「・・・・行く。それより、男がいて大丈夫なのか?ゆかりは男苦手だぞ」

志波って同じクラスのデカい奴だよな。

「へえ、ゆかりちゃんの事よくわかってるんだ。それに呼び捨てしてるの?」

げ。やばい。

「あと佐伯君、いつもと感じが違うけど?」
「ああ、こっちが本当。色々面倒だからいつもは仮面つけてるだけ」

もう面倒になって答えた。

「ふうん、私には関係ないから良いか」
そう言って去っていった。

後ろ姿を見ながら、ぶつかった口を抑えて考えた。アイツ何も言わなかったけど、今キスしたよな。
今の唇の感覚って昔のアノ子の唇に似ているような気がする。
海野の顔もよく見たらアノ子によく似てる。
まさか海野がアノ子なのか?

でもそんな事はもうどうでも良い。
今、俺が一番気になるのはゆかりだ。小さい頃の人魚が海野だとしても今の俺の人魚はゆかりなんだろう。

海野なんか関係ない・・というより、なんなんだよアイツはという思いのほうが強い。
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