妄想本棚
□同じ空−太公望ver.
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【同じ空――夕陽】
今日の夕陽は久々に見惚れる程きれいな彩りで。
たなびく雲に山吹色の光、包み込む深みを増した青い空。
きれいすぎて、目を閉じて物思いに耽る。
きっとあやつも見ているのだろう。
同じ世界でなくとも、同じ空を見上げている。
有り得ない事だけどそう思った。
そしてあやつは大仰に溜め息なんぞをつきながら、わしの名前を呟いているのだ、きっと。
逢いたい、と敢えて声にせずに噛み締めてみたりして。
随分とロマンチストな奴だから、目尻に多少の涙を滲ませているかもしれない。
くすくすと笑いながら少し意地悪く考える。
でも多分、間違ってはいない。
そういう奴だから。
ゆっくりと瞼を開くと、いつの間にか陽は殆ど沈んで、世界は闇に包まれる直前のやわらかな菫色に変わっていた。
「――よ……ぜ…」
続く声を飲み込む。
「はー…」
自分の思考回路に仰々しく溜め息をついてみる。
さっきから考えているのは、ずっと、考えているのは――。
仕方ない、そろそろ逢いに行こうか、あの気障な菫色の瞳の青年に。
〈了〉