取扱注意

□ひとしずくのあなた after
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太公望の夜着は肩から腹部へと開かれ、更に大腿部から下へと大きく乱れて白い肌をあらわにしている。
その中央に隠れている、彼の快楽を最も忠実に表す場所は、形を変え、しとどに蜜を溢れさせているだろう。
もっと――もっと沢山の躯を震わす刺激を欲し、待ちわびているのだ。
それを承知の上で、楊ゼンはそこを避け、しっとりと汗ばんだ腿に、じゃれるように咬みついた。
「やっ…!」
夜着を少しずつたくしあげ、唇と舌がそれを追っていく。
肌の柔らかさと白さは、少年期特有の潔癖さを示しているようだ。
その瑞々しい感触に楊ゼンはため息を溢す。
「――師叔…」
やがて脚の付け根付近に辿り着くが、躯の中央で震える太公望自身には触れることなく、反対側の脚を先程と同様に舌で愛し始めた。
心のどこかで自身に触れてもらえると思っていた少年には、酷以外の何ものでもなかった。
脚に与えられる愛撫は、間違いなく太公望自身を追い詰めているのに、わざと知らないふりをして素通りするなど――。
「よ…ぜん…っ」
「次はここ、ですか?」
溢れた蜜を掬い、少年の最も奥へ繋がる入り口をやさしく撫でた。
「あ、う…っン、ああ――」
余り奥までは差し入れず、入り口付近を丁寧になぞる。
それはむず痒くなる程に焦れったい愛撫で――やがて少年は強く頭(かぶり)を振り、そして無意識ながらも細い腰を揺らめき始めた。
「楊…、楊ゼン…!」
碧の瞳は今にも泣き出しそうで、快感に酔いしれた表情と相まって、この上なく儚い色気を醸していた。
「どう…して欲しい…です…?」
「楊ゼン…!」
「言葉にできるでしょう?」
尚も不埒な指先は、太公望の秘め口を角度や強さを変えて、くちゅくちゅと掻き乱している。
その濡れた音さえも、少年の羞恥心を煽り、理性を奪っていく。
少年は暫く俯いて耐えていたが、震える躯で青年の髪を引っ張り小声で囁いた。
「よ…ゼン、頼む…。もっと…ふ…触れ、て…」
耳朶を甘えるように吸って、途切れとぎれに出た言葉はとても――とても小さく掠れた声だった。
おねだりにしては曖昧で中途半端な内容で。
「…はい、あなたの望むままに」
どんなに小さな聞き取りづらい声でも曖昧な台詞でも、楊ゼンには充分だった。
他の誰に聞かせる必要などない。
自分と彼の間で通じあえれば、それだけで言葉は充分にやるべき事を為したのだから。

夜着の帯を解き、太公望の全てをあらわにすると、楊ゼンは躯の中央で震え蜜を溢す彼自身にくちづけ、口に含んだ。
「あ――あぁあ…っ! ん、あ、あぁ…はぁ…」
散々焦らされ、刺激を待ちわびていたそこは、青年の口内に含まれた瞬間に達した。
楊ゼンはそのとろける蜜をいとおしげに全て飲み干すと、弛緩した躯を横たえ、秘め口を濡らしていた蜜を改めて指先に纏う。
「奥まで慣らしますね」
丁寧に触れて解れつつあった入り口に指を並べると、弛緩した躯は蜜のぬめりで殆ど抵抗なく指を含んでいく。
ある程度進んだ所で長い指を抜き差しすると、秘め口は時折きゅっ…と締め付ける仕種を見せ、それに楊ゼンは息を飲んだ。
少年を焦らしたのは確かに自分なのだが、焦らされ喘ぐ姿に欲情を抑え込んで愛撫していたのもまた自分で――。
追い詰められた青年自身も、その存在を誇示していた。
「太公望師叔…、僕に触れてみて下さい」
半ば理性を失いつつある小さな手をとり、怒張した自身に触れさせる。
「熱い…」
「あなたが、僕をこんなにしたのですよ」
細い指が、楊ゼン自身の熱を確かめるように全体をなぞる。
それはたどたどしくはあったが愛撫も同然で、青年の理性を掻き乱す――。
「あ…あ、師叔…、あなたの指…気持ちいいです…」
楊ゼンの息も上がり、次第に余裕がなくなっていった。
少年の繊細な蕾も充分に解れ、花を咲かせんばかりに『その時』を待ち望んでいるようだ。
「太公望師叔…」
「よ…、楊ゼン」
名前を呼びあい、見つめ合う。
どちらも焦がれた眼をして、息を乱して。
戯れのような啄むくちづけが、合図だった。
「…太公望…師叔…」
「あ、あ、あぁあ、あ…あぁ…んっ、あ、あっ、…あ…!」
熱く脈動する塊が、じわじわと太公望の中に侵入する。
何度繰り返しても慣れないけれど、この熱さも圧迫感も、躯の奥深くに馴染んだもの。
気が遠くなりそうな快楽は、泣きたくなるような一体感は、自分だけをひたむきに欲しいと云う青年がくれるもの。
欲しくて、堪らなく欲しくて――与えられた安堵と息苦しさに、涙が溢れた。


深く繋がった場所は、楊ゼンと太公望の蜜にまみれていた。
二人の蜜は月明かりに鈍く照らされ、青年の視線を引き寄せる。
そこは懸命に膨らんでおり、雄々しい楊ゼン自身を招き入れた事を如実に物語っているようで。
「ここで――繋がっている…」
楊ゼンがそっと撫でると、ぐぷ、と小さな音を立てては更に奥へと誘っている。
その誘惑から逃れる事は、もはや不可能だった。
「師叔、僕を、もっと――」
「あっ、ああ、ん…あ…ぁ、あ、よ…う…っ、楊…ゼン…っ!」
奥の、もっと奥を二人は目指した。
燃えてしまいそうに熱い躯、じゅくじゅくと溢れる蜜、心を捕らえる甘い声――。
壊れてしまいそうな程の狂おしさは厭わずに、最愛の人の名だけを何度も何度も呼んで。

二人が共に果て、その後も繰り返し求め合う姿を、月は無言で見守っていた。





〈了〉
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