短編(パラレル)

□甘い香りに包まれて RNR(R18)
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私は、世の中の全てに辟易している。変わり映えしない毎日、職場と自宅を往復するだけ。

学生時代はまだ、楽しかった、と言える気がする。
今にして思えばの話。
私の性格上広く浅くではないにしろ、少ないながら友人はいたし、
責任は問われないし、待っていても何かしらのイベントがある。

社会に出てしまえば、いちいちやること為すことに責任が伴い、
もう大人なんだからと、誰も見返りなしには手を差し伸べない。

良い人間関係、なんてどう構築したら良いのか、皆目私には検討もつかない。


馬鹿で横暴な上司。
その上司の前で跪きご機嫌を取っては、
理不尽に仕事を押し付けてくる先輩とも呼びたくない人間。

共同で仕事をこなさなくてはならないのに、
やる気がないのか馬鹿なのか(その両方だろう)、
報告連絡相談全てにおいて必要を抜かした最低限、
こちらから尋ねなければ何も言わない同僚。
その同僚の所為で今日も、
どういうわけか締切ギリギリの仕事の帳尻は私が合わさなければならない。うんざりする。


就職してからというもの、学生時代の友人とは、ごく稀にしか会わなくなった。
お互いなんとなく忙しいのが社会人であり、
こんなストレスを溜め込んだ状態で楽しい気分になれないだろうと、
こちらから誘えないこともある。


どこでどう間違えたのかわからないが、世の中に希望なんてモノは、微塵もなくなっていった。
どこで間違えたのかわからないのだから、修正するにはリセットしかない。
リセットボタンがあるなら、迷いなく押せる自信がある。
それによって、自分が消えようとも。


大学時代付き合っていた彼氏とは、ずいぶんと前に別れた。
就職してから半年と持たなかった。
卒業したらすぐ結婚するかもね、なんて言っていた癖に、
早く家庭を持ちたいとか言っていた男は、大学院に進学した。
飲み会帰りの遅くに家に上がり込んでは、退屈な前戯をして挿入してくる。

学生時代は好き、と思った筈のこの男にも心底うんざりして、簡単に別れを切り出した。

告白してきた時の一回を除いて、付き合っている間好きなんて一言も言わなかった男が、
急に好きだ、別れないでくれと、涙まで見せるのが滑稽でしかなかった。
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