短編(パラレル)

□離せない、離さないで(R18)
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先生と会えるのは、先生から連絡があった時だけと決まっている。

あの日から二週間、先生からの連絡はなかった。
先生に会いたくて堪らないと、心も体も切実に訴えている。


細やかで柔らかくて繊細な手と、少し低くて透き通ったアルトの声と、嗜虐的なのに優しい深い色をした目。

それらはみんな、胸や背中を這い、首を絞め、口を塞ぎ、辱めて、いつもいつもナミを追い詰めて泣かせては鳴かせる。
そのたびにナミは求めているし、もっともっと体の中まで侵してくれたっていいと思っている。
まるで、乾ききった砂漠の砂になってしまったみたいに。


もう認めざるを得ないこと、先生のことが、好きなの。
あたしから連絡するということは、ルールを破ること。
先生と会うことを許されなくなるかもしれないこと。
それでも、このまま何もなかったように、終わらせることはできなかった。


貰ってからずっと、引き出しにしまっていたコースターを取り出す。
番号はケータイに登録してあるからこんなものは必要ないけれど、儀式やおまじないや願掛けをするように。
初めて電話をかけた時と同じように、書かれた綺麗に整った字を眺めながら呼び出し音を聞く。

「…ナミ?」

「先生、会いたいの」

「……いいわ、いつものマンションに来なさい」

会ってくれるというだけで、あたしは嬉しくて仕方ない。
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