小説

□第2話
1ページ/4ページ



大勢の生徒達が今日も白雲高校へと向かう。今日は親の付き添いは無い。
その中には真子と砂玖も混じっていた。

「ねぇ、昨日のって先輩だよね?」
「そりゃあ、ねぇ。ほとんどの人達が私達の先輩だし。それに、あの人達腕章付けてたし、もう確実に先輩だと思うよ。…それがどうしたの?」

突然の真子の呟きに、砂玖は驚きながらも冷静に返す。ちらりと、真子の様子を盗み見ると、彼女は何やら考え込んでいる様子。

「また会えると思う?」
「さぁ?いつか会えるんじゃない?同じ高校にいるわけだし…。あと真子、よそ見してたら……」
「あ!!」
「…こけた?」
「違う違う。ほらあそこ!」

ぼんやりとした様子の真子に一言注意を入れようとした時、少し後ろから真子の叫び声が聞こえた。
あぁ、遅かったか、と思いながらも後ろを振り返ると、真子はその場に突っ立ったまま、ある一点を指さしていた。
砂玖はその指のさす方向を辿る。その先には、昨日出会った二人を含む四人組の姿が見えた。

「あ、昨日の先輩達。よく見つけられたわね…」
「もち!探してた!」
「ほう、ご機嫌な事で」

いつにも増してテンションの高い真子を、砂玖は訝しげに見つめる。

「随分と気になってるみたいね。……まあ、私も帰り際の先輩の言葉は気になったけど……」
「あ、確かに。うちら名前言ってないのに先輩名前知ってた!」

その上機嫌である理由に思い当たるものがあったのか、砂玖はニヤリと口元を緩める。
しかし、それを口に出すことは無く、別の話題へと話を振った。
思惑通り、真子はその話題に乗り、話を進めていく。

「……聞いてみる?」
「そうね、それが一番手っ取り早いわね。……それと、真子。あんた昨日のことちゃんと謝っときなさい。初対面なのに先輩に失礼かましたんだから!」
「あ、だった!」

聞くが早い、という結論に至った二人は、彼らに声をかけることを決める。その際、真子が昨日やらかした“盗聴”について、謝ることを忘れないよう、砂玖は釘をさした。

自分たちの遥か前を歩いている四人に、二人は掛け足で近づいて行く。
そんな、パタパタと駆けて来る二人の足音に、四人のうちの一人が振り返った。

「なぁ、雷。誰かこっちに近づいて来るぜ?」

彼は二人が自分たちに近づいて来ていることを認めると、隣にいた昨日の一人に声をかける。
その声に彼もまた後ろを振り返った。

「あぁ、昨日の子たちだね」
「知り合いか?」
「いや。ただ、新入生ってことは知ってる」
「ふーん」

雷と呼ばれた彼は、その二人が昨日出会った真子と砂玖であることを認めると、クスリと目元を細めた。
その様子に、二人に最初に気付いた彼は興味深げに彼女達を見つめる。
不意に足を止めた彼らに、他の二人は不思議そうに振り返った。

「どうした?」
「…先輩!」

彼らが二人に問いかける声と、真子の彼らに呼びかける声が重なる。
その声に、他の二人も真子たちの存在に気づき、そちらの方に意識を向けた。

「誰?」

その二人のうち、昨日はいなかった一人が真子たちを見て眉をしかめる。

「昨日会った新入生。……おはよう、そんなに急いでどうしたの?」

その呟きを放った彼に対し、先程と同じ様な返答を返し、雷は真子たちに微笑みかけた。

「あ、おはようございます!あの、昨日のことで少しお話が……今大丈夫ですか?」
「構わないよ」

雷の挨拶に、真子と砂玖はハッとしたように慌ててその頭を下げる。
次いで、彼らと話すことに対して承諾を請うた。
それに一つ返事で応じた彼らは、真子たち二人を加え、六人で再び歩き始める。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ