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母親を亡くして、初めて気が付いた。
自分の弱さ、甘さ、脆さに。
俺は守れなかった。大切な人を失ってしまった。
悲しくて悔しくて我を忘れて泣き叫んだ。
理想の息子であり、兄であるつもりだった。
強く優しくあろうと。
けれど、この日俺は現実を突きつけられることになる。
俺は弱い人間だった。
弟を宥めるどころか、自分が慰められる始末だ。
ダンテは昔からいつもふわふわしているやつで、心配だからと俺が今まで導いて、諭し、正してきた。
だが、弟は俺が思うよりもずっと強かったのだ。
俺と違って、涙一つ見せなかった。
俺は、考えも思いの強さも甘かったと気付かされた。
俺は…弱い…
あの日以来、考えていることがあった。
優しさは甘さだ。そんなものを追い求めていては強くなれないと。
そして強くなる、その方法を。
あちこち探し回った。来る日も来る日も。
そのうちにダンテは弱い俺に見切りをつけたのか、距離をとるようになった。
仕方のないことだ。
強く正しいと思っていた兄は幻想だったのだから。
今はそれで構わない。
力が手に入れば…力さえあれば…
そのうち、興味深い文献を見つけた。
これがあれば、なんとかなるかもしれない。しかし、肝心な部分が書かれているであろう箇所が抜け落ちていて、読むことができない。
他の場所に行けば、見付かるだろうか。
俺は家を出た。
余計な心配をさせるかもしれないと、ダンテには何も言わずに。
たくさんの街を渡り歩いた。
気が遠くなるほどの量の本を読み続けた。
その時に、アーカムと名乗る男と出会った。
奴は俺を知っているようだ。
男は言った。
完全な悪魔の力を手にいれることができれば、強さが手に入ること。
そのために、ある封印を解かなければならないこと。
封印解放の為に、必要なものがあること。
少しずつ核心に近付いているはずだ。
俺は家に戻った。
必要なものとはきっと、幼い頃に母から弟と一緒に一つずつ貰ったもののことだ。
…弟は、ダンテは無事だろうか。
しかし、家に弟は居なかった。
“バージルなんて大嫌いだ”と掠れた文字で書かれた紙切れを残して。
強くならなければならない。誰よりも。
例え、この先ずっと、ダンテの大嫌いな兄でいることになったとしても。
もう二度と、大切な家族を、弟を失わないために。
久しぶりに会った弟は随分と雰囲気が変わっていた。
一応戦う術を身につけてはいるようだが、それだけでは心許ない。
何故ダンテは力を求めようとしないのか?
生きていくためには力が必要だ。
大切なものを守るためには力が必要だ。
歯痒い。
どうして気付かない?
「何故更なる力を求めない…父の−−スパーダの力を!」
…ならば、お前の大嫌いな兄が教えてやる他あるまい。
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