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□01,すべての始まりは芸術
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リエナは意を決した顔でマンションに向かった。
ドキドキと高鳴る鼓動を抑えつけながら町を歩く。
そしてケータイを耳に当てると通信音が聞こえてきた。
『リエナ?』
マークが不思議そうに電話に出るとリエナは上を向いた。
「今から家に向かっていい?」
『え?何かあったの?』
心配そうに尋ねるマークにリエナは目を伏せて笑った。
「ううん。てか、もう家の下に居るんだよね」
そう呟くとマークの慌てる様子が電話越しから伝わってくる。そして落ち着いたトーンで話すマークの声が目の前から聞こえてくる。
「思わず下りて来ちゃった」
電話を片手に現れるマークにリエナは笑った。
「お邪魔しまーす」
マークに家に上がり込むリエナにマークは笑う。
「何、そんなに畏まって」
「だって勢いで来ちゃったから」
「そうだった!何かあったの?」
マークはリエナをソファに座らせると真っ直ぐに見つめる。
「そうだね。今日来たのは舞踏会について」
「舞踏会ってデビュタント舞踏会のことだよね?」
「そう、あのデビュタント」
リエナは両手でピースしてみせる。
「一緒に社交界に出てくれない?」
そしてリエナは勢いをつけて言った。するとマークは目を丸くさせリエナを見つめるとリエナは目を細めて笑った。
「何か言ってよ」
「そうだね。驚いてる。凄いドラマチックだった」
「で、どうかな?」
「そんな光栄なお誘い断れるわけないよ」
「その言葉を待ってた」
リエナは安心したように笑うとマークはリエナの鼻を摘まんだ。
しばらく2人は西部劇の映画を鑑賞していた。
「もし私が誘わなかったら誰と舞踏会に出るつもりだったの?」
「うーん、誰とも行く気がなかった」
思いもしない言葉にリエナは映画から目を離しマークを見つめた。
そして微笑む彼にリエナは目を細めた。
「また冗談じゃないよね?」
「どうだろう」
「じゃあ舞踏会に出ないで何する予定だったの?」
「本格的に映画作り?」
首を傾げながら答えるマークにリエナは目を丸くさせる。
「え!?じゃあ舞踏会に出てないで映画製作に専念しなよ」
マークに体を向けリエナは彼の背中を押したがマークは肩を竦めていた。
「でもまだどんな映画を製作しようか決まってないんだよね」
「そうだったんだ」
リエナの残念そうなそぶりにマークは笑った。
「でも舞踏会に出ることになったし、むしろ良かったかも」
「なんで?」
「学園もののストーリーも有りじゃない?」
「そうだね…、その映画私達しか観ないかもよ?」
「それも有り」
マークの冗談にリエナは大きな口を開けて笑った。