with wicth
□1:記憶
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「全く、懲りない悪魔だね。私に幻術は効かないよ」
「ただの人間のくせに…ソロモン!」
上座に座る優美な男は、片膝をついてうずくまる悪魔を見下した。
「然し…君の孤独はよく分かる。私たちはとても似ているから」
「っ!」
「哀れで愚かな魂よ、私のものになりなさい。…フェベル」
ソロモンが呼ぶと同時に、奥の垂れ幕から人影が動いた。
出てきたそれは、神々しさをまとっていた。
「呼んだか」
「証をつけてあげなさい」
ソロモンの遠くを見るような瞳に、フェベルは無表情で頷いた。
「…判った。仰せのままに」
そのままダンタリオンのそばまで寄ると、きゅっと抱きしめた。
「なっ」
「安心しろ。これは、ソロモンとの証だ」
ダンタリオンとフェベルの下に淡い紅色の魔方陣が浮かび上がり、2人を包んだ。
しばらくして光が収まると、ダンタリオンはゆっくりと倒れた。
「ご苦労様」
「大したことはない。しかし良いのか」
フェベルが問いかけても、ソロモンは目を伏せたままだ。
「禁忌の永久術は、永く受け継がれるぞ」
「魔術は召喚した本人が対象だよ」
「やつは知らず仕舞い、か」
「代償は大きい…。すまないね、フェベル」
「もう遅い…」
フェベルは力なく横になっている悪魔を見詰めた。
―あれから、どれくらいたっただろうか。
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