FAIRY TAIL
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目が覚めると、強力な魔法の名残が伺えた。S級魔導士のミストガンだ。
「ミストガン?」
「妖精の尻尾最強の男候補の一人だよ」
知らないルーシィにロキが親切に教える。珍しい、と思っていると、本人も気づいていなかったようで、そそくさと退散していった。代わりはオレか。
「どういう訳か誰にも姿を見られたくないらしくて、仕事をとる時はいつもこうやって全員を眠らせちまうのさ」
「なにそれっ!!! あやしすぎ!!」
「だからマスター以外誰もミストガンの顔を知らねえんだ」
「いんや…オレは知ってっぞ」
上から振ってきた声をたどると、葉巻をくわえヘッドホンをつけたラクサスが、二階の手すりに肘をついてこちらを見下ろしていた。最強候補の一人としての実力は認めるが、オレはどうもコイツがいけ好かない。
「キィナも知ってるんだろう? おまえ、あいつの魔法効かねえもんな」
ラクサスの目線の先、いつの間にかカウンターに座っているキィナを勢いよく振り向いた。そんな話、噂にも聞いた事ねぇ。
一階の誰を見ても、じーさん以外は疑問符を掲げている…あいつが一番心を許しているはずのエルザですらも。どうしてそれを、ラクサスが知ってるんだ?
驚愕の目で奴を見上げるキィナは少し震えている。やがてふいと顔をそむけると、動揺した声で小さくつぶやいた。
『…私は、顔は知らない。そんな事には、興味がない』
そう言うと、フードを被ってカウンターに伏せってしまった。
ふーん、と、ラクサスはつまらなさそうにキィナを見ていたが、しばらくするとこちらに視線を戻した。
「まあいい。ミストガンはシャイなんだ。あんまり詮索してやるな」
「ラクサスー!!! オレと勝負しろーっ!!!」
いつの間に目を覚ましたのか、あのバカはこんな時に喧嘩を仕掛ける。
「さっきエルザにやられたばっかじゃねえか」
「そうそう、エルザごときに勝てねえようじゃ、オレには勝てねえよ」
「それはどういう意味だ」
「オイ…おちつけよエルザ」
コイツがいると、場が険悪になる。考え方も気にくわない。例えば、
「オレが最強って事さ」
こういうところが同じギルドの者として癪に障る。ギルドの仲間が傷つくことにも構いやしない。
「妖精の尻尾最強の座は誰にも渡さねえよ。エルザにもミストガンにも、あのオヤジにも…ああそうだ、おまえにもな、キィナ。オレが…最強だ!!!」