FAIRY TAIL

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 ギルドを出ると、やりようのない気持ちを抑えきれず走り出した。

 私に状態異常魔法が効かない事を、ラクサスはどうして知っているのだろう。
 いや、これは偶然何かの際に見たのかもしれない。だけど、最後に私の名前を出したのはなぜ? 私の事を、彼はどこまで把握しているのだろう…


 …相手側に私の存在は既に知られていると考えて間違いないだろう。妖精の尻尾にいられなくなるのも、もう時間の問題。

(次はどの方角に行こうか。今度は行き倒れないようにしないと…)

 色んな仕事に出たおかげで、このあたりの土地についてはそれなりに詳しくなった。

(…だけど向こう側がどう出るか、まだ分からないし…)

 と考えながらも、浮かぶのは妖精の尻尾の人達。本当は、彼らと離れたくないが故の言い訳でしかないという事は自分でも分かっている。

『…情報がもう少し集まったら』

 そうしたら、すぐにさよならするから。
 自分に我が儘を言って、胸の苦しいのを見なかったふりをして、そのまま見慣れた白い布団に倒れこんだ。







 …あれからまさか、一日中寝ていたなんて思いもしなかった。どうやら知らないうちに疲労が溜まっていたのだろう。前にもこんな事があった気がする。
 慌てて朝早くにギルドへ向かうと、いつもと違う騒々しさが私を出迎えた。

『無理を言っているのは承知です。マスター、私にも行かせてください』
「じゃがお前さん、連日の仕事で疲れておるんじゃろう」
『昨日一日中寝たのでもう平気ですから』

 根拠のない不安が胸を締め付ける。
 状況が飲めない私に、ナツ達がS級クエストに行ってしまったとミラが教えてくれたのだ。引き留めに行ったグレイが帰ってこないとも。

「それにこれはもともとS級…珍しいお主の頼みとはいえ、昨日のうちならまだしも…」
「私からもお願いします、マスター」
『エルザ!?』

 近づけば爆発するんじゃないかというくらい異様な空気を醸しだしていたエルザから、まさか協力を得られるとは思わなかった。

「四人とも怪我を負って危険な状態…などということになっていれば、私一人では対処しきれません。キィナは私が責任を持ってギルドに返します」
「ううむ…エルザがそう言うならば…」

 ギルドに背を向けて歩き始めたエルザに、感謝の意を込めて深く頭を下げた。






 その日のうちにルーシィ、ハッピーの捕獲に成功、エルザが凄みをきかせて状況を把握した後、資材置き場で手当てを受けたグレイを発見した。ナツは見つからないまま。

 ルーシィ達から聞いて分かったこと。
 グレイの知人による月の雫の儀式の影響で、村人が悪魔になっている事。
 儀式の目的は悪魔デリオラの復活である事。
 儀式の邪魔をしたとして村を消そうとしたため村は壊滅、住民は資材置き場に避難している事。



 グレイの怪我を見に行った時は、全身に巻かれた包帯が痛々しく、命に別状はないと聞いてはいるけれど、やっぱり不安なものは不安で。

『…早く目を覚ますんだぞ』

 エルザに治療は不要だと言われたので、一言だけ残してその場を立った。



 残るは、ナツ一人。








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