FAIRY TAIL

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――早く目を覚ますんだぞ


 素っ気ないけれど不安気な、鈴のような声が聞こえた気がして目を開くと、そこはテントの中だった。
 オレは確か、リオンとの勝負に負けて、ナツに背負われて…気絶したのか。情けねえな。

 にしても…

「どこだここは?」

 なぜ家ではなくテントなのか。状況が飲み込めず外に出ると、村人に声をかけられた。

「よかった…目が覚めましたか?
 驚くのも無理ないですね。ここは村から少し離れた資材置き場なんです。昨夜…村が無くなっちゃったから、村の人たちはみんなここに避難してるのよ」
「村が…無くなった?」

 一瞬何を言っているのかと思ったが、昨晩のリオンの言葉を思い出すと、悪寒が背筋を走った。
 握り拳に力を入れると、傷がうずく。丁寧に介抱されたとはいえ、まだ傷は塞がっていない。

「でもナツさんやルーシィさんのおかげでケガ人がでなかったのがせめてもの救いです」
「あいつ等もここにいるのか?」
「ええ。グレイさんの目が覚めたらテントに来るように伝えてくれと」





 後から考えれば、別の所で待っていること自体おかしかったのだが、てっきり普通に出迎えられると思って油断していた。
 中に入ると、身の毛がよだつほどのオーラを纏ったエルザが足を組んで待ち伏せていた。ルーシィとハッピーは縛られて静かに嘆いている。その隣にはナツ……ではなく、俯いて地面を見つめるキィナの姿。

「なんで…キィナもいるんだ?」

 キィナがはっと顔を上げて口を開こうとしたが、エルザが腕を上げて制止した。

「私がマスターに頼んだのだ。万が一のこともあるからな。
 だいたいの事情はルーシィから聞いた。おまえはナツたちを止める側ではなかったのか? グレイ」
「……」
「あきれて物も言えんぞ」
「ナ…ナツは?」
「それは私が聞きたい」

 カッと開いたエルザの目は完全に据わっている。思わずそらしてルーシィの方を向いた。

「ルーシィ…ナツはどうした?」
「わ…わからない。村で零帝の手下と戦ってたハズなんだけど…そいつ等は片づけられてたのに、ナツの姿が見あたらなかったの。
 そ…それでね…とりあえずグレイの所につれてけって言われて…」
「よくこの場所がわかったな…」
「オイラが空から探したんだよ」

 縛られたまま、とハッピーが怯えた様子で答えた。

「つまりナツはこの場所がわからなくてフラフラしてる訳だな。グレイ、ナツを探しに行くぞ。見つけ次第ギルドに戻る」

 戻るだって? この状況で…?

「な…何言ってんだエルザ…事情を聞いたなら、今この島で何が起こってるか知ってんだろ」
「それが何か?」

 エルザの考えはてこでも動かなさそうだが、冗談じゃない。オレはリオンを止めなければならないんだ。
 しかしルーシィは震えながら力なく首を横に振り、キィナはまた俯いて口を真一文字に引き結んでいる。

 オレは一瞬言葉を失った、が…それでもオレには、やるべき事がある。

「見損なったぞ…エルザ」
「何だと?」

 エルザの目がピクッと動いた。

「おまえまでギルドの掟を破るつもりか」

 そう言うと剣を換装し、オレの喉元に突きつけた。だがそんなものは、今のオレには恐怖でも何でもない。
 がし、と刃を素手で掴むと、エルザが動揺する。下の方からハッと息を飲む音が聞こえた。

「勝手にしやがれ!!! これはオレが選んだ道だ!!! やらなきゃならねえ事なんだ」

 手に力を入れると切っ先に血が滴る。するとエルザはぱっと剣を振ってオレの手を引き離した。
 それを了承と見て背を向ける。

「最後までやらせてもらう。斬りたきゃ斬れよ」

 言い放ってオレはテントを後にした。









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