FAIRY TAIL

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「ファントム…」

 少し冷静さを取り戻したエルザ達が我を失った私を宥めていた時、後方から聞こえてきた沈んだミラジェーンの声。

「悔しいけど……やられちゃったの……」



「お!エルザ達が帰ってきたぞ」
「ナツとグレイも一緒だ」

 ギルドのメンバーは地下に避難していた。酒場を破壊されて、中の空気はピリピリしている。

「見たかよ!!ギルドのあの姿!!」
「ファントムめぇ!!!よくもオレたちのギルドをぉ!!!」
「うちとは昔から仲悪ィもんな」

『ふぁ…ファントムって、何だ?』

 聞いた事のない名に疑問符を放つと、ルーシィに吃驚された。

「キィナ知らないの!?ファントムといえば妖精の尻尾と不仲な事で有名なのよ!!」
『そう…』

 聞いておいて何だがその辺りはどうでもいい。問題は、何故今このような行動に出たかという事。ギルド間の事情やらはよく知らないけれど、今回のこれが私絡みだとすれば…


「よっ、おかえり」

 あまりに場違いな明るい声を出したのはマスターだった。片手にはお酒の注がれたジョッキがあり、顔には既に若干赤みが差している。

「じっちゃん!!!酒なんか飲んでる場合じゃねぇだろ!!!」
「おーそうじゃった。
 おまえたち!!勝手にS級クエストになんか行きおってからにー!!!」
「え!?」
「はァ!!?」

 まさかのS級に関する説教に、思わず私も思考を止める。ナツ、グレイ、ハッピーの頭に手刀を入れ、ルーシィにセクハラをしてミラに咎められる。
 それどころではない、とエルザとナツが物凄い剣幕で詰め寄るも、マスターは煩わしそうに落ち着けと言う。ギルドが襲われたのは夜中で、怪我人はいないらしい。思い出の詰まる酒場を壊されて平気なわけではないけれど、本当に大切なのはそこにいる「人」であると。

 いきり立つナツを無視して、マスターはトイレに駆け込もうとする。が、何を思い立ったかはたと立ち止まって踵を返し、私の前にやって来た。

『マスター…?』
「そんなに気負うことはない。おまえさんのせいではないのじゃから」

 唖然とした私の頭を軽く叩くと、そのまま猛スピードで走り去った。それを見たギルドの皆も次々と声をかけてくれる。私、そんなに顔に出ていたのか。
 それでも私の心が晴れることはなく、収まったと思った時を見計らってこっそりとギルドを抜け出した。








 
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