FAIRY TAIL

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 キィナが変化する前のように体の中から魔力を吸い出される事はなかった。だが腕の中に収まったはずのキィナは未だに滅竜魔法を乱発する。どんどん傷が増えていくが、こんなものは大した問題じゃない。オレの事を認識する前にこの腕から脱け出してしまわないよう、少し力を強めた。
 と、いきなり攻撃を止めた。終わったか、など、なんて愚問。とどまることを知らない魔力の増加がそのスピードを増す。

『滅竜奥義…』

 この状態になって初めて聞く声に戦慄する。いつもの澄んだソプラノではなく、少し低く腹の方から響く声。キィナの声ではあるのにキィナではない事を嫌でも思い知らされる。つーか待て、今「滅竜奥義」っつったな? オレの幻聴じゃねえよな?
 彼女の両手がオレの背に近づき、増加した魔力は全て手元に移る。

『嵐舞・散咲花(ちるさくはな)――薔薇』

 直後、背中に走る激痛。同時に全身に痺れが走って、自分の叫び声も自分のものじゃないように感じる。目で見ることが出来ないから後ろがどうなってるかなんて分からない。それでもこの腕だけは、どうしたって離すわけにはいかない。


「キィナ…目ェ覚ませっ!!!」





『…グ、レイ……?』

 胸元から聞こえてくる弱々しいソプラノに、飛びかけていた意識を無理矢理引き戻す。顔を覗き込むと、鱗のようなものは消えていた。

「キィナ? 戻ったのか…?」
『グレイ…? 血…? …ああ、私はまた……』
「おい、キィナ!? しっかりしろ!!!」

 元に戻ったと思ったらそのままぐったりしてしまう。当然か、今までの人生で感じたことがないほどの膨大な量の魔力をこいつは解放したんだから。
 湖の中に足をつけて、湖畔に座ってしばらく彼女を抱えながら残った疑問について考えていると、後ろの方からガサゴソと草をかき分ける音。振り返れば、

「グレイ!!! キィナ!!! 無事か……!!!!」

 息をきらせて飛び出してきたエルザに後ろからひょこっと顔を覗かせたルーシィ、ハッピーを抱えたナツ、何かが入った袋を手にしたじーさんが驚いたような目でオレを見た。

「おう…なんとか、な……」

 だがどうやらオレの方も限界が来ていたらしい。それだけ答えると、ギリギリのところで保っていた意識を手放した。









 
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