FAIRY TAIL

□19
4ページ/5ページ




 目が覚めたのは数時間後。ギルドの医務室に人が動く気配はない。やけに静かだな、と起き上がり扉の方を向くと、隣のベッドであの時と同じような哀しげな表情のまま眠るキィナが目に入った。




―――――




 照りつける太陽、渇いた地面。依頼先でちょっとやらかしてしまい帰りの電車代が無いため、ロキと二人、歩いて砂漠を渡っていたのは一年程前の話。

「ったく、何でわざわざこんなあっついとこ通って帰るんだよ」
「しょうがないじゃないか、君が女の子の前で公然ワイセツ繰り広げるからでしょ」
「うっ…でもギルドのやつらは…」
「ギルドと一般の人を一緒にしちゃだめだよ……っ!!!!」

 うだるような暑さの中で重い足を無理矢理進めていると、突然歩みを止めざるを得ないほどの突風。砂が舞い、目も開けていられない数秒間の後にオレたちの前に現れたのは……至る所がズタズタに引き裂かれ、赤の散った白いローブに身を包み、苦しげな、哀しげな顔で倒れている亜麻色の髪をした少女だった。




―――――




「あん時のキィナの人間不信は酷かったよな」

 急いで運び込んだ近くの小屋で目を覚ましオレたちを見た途端、ベッドから飛び降り窓から脱走しようとしたあの頃のキィナは相当荒れていた。同時にあのケガであれほど素早く動ける身体能力にも驚かされた。今思えば想像できないような厳しい経験を幾度もしてきたからこそ出来た反応なのだろう。彼女は一体、どれ程の苦労を重ね、危機的状況を目の当たりにしてきたのだろう。

「…辛かったろうな」

 無意識に彼女の髪へ手を伸ばし、はたと止める。
 自分と大して変わらない年齢なのに、計り知れないほどの大きな闇を背負って今を生きているのだろう彼女を、あの時と変わらず守ってやりたいと強く思う。けれど相次ぐ強大勢力による彼女の拉致、今回のキィナの変化…正直、守りきれる自信はない。

「オレはまだまだ弱ぇ…」

 しばらく宙をさまよった手は、触れる事なく元の位置に降ろされた。そして人知れず固く拳を握る。

「けど、絶対に強くなってみせる。どんな時でもおまえを守れるように」









*****
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ