FAIRY TAIL

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【side Lucy】

 頭痛いなぁ、なんて起き上がって、まだ酔いの覚めきらないギルドに苦笑いする。ちらほらと目覚めはじめた人の中で、見当たらない姿が2、3。

「ミラさん、何だか物足りない気がするんだけど…」
「そうね…いつもならナツとグレイが喧嘩しはじめてる頃よね」
「!! そっか、グレイがいないのね!!! ナツといえば、すぐそばにいるはずのハッピーも…」

 普段なら「寝相が悪ィんだよ!!」とか言って喧嘩が始まって、その騒がしさでギルドが起きてくるくらいの日の高さ。なのに今日はまだ、ナツは気持ち良さそうに床で熟睡している。
 やっぱり、キィナの事かしら。ラクサスがいなくなってすぐに姿を消したから、皆キィナは彼を追っていったんじゃないかと噂していた(実際は違ったみたいだけど)。それに、追われているとは以前ミラさんから聞いていたけど、まさか六魔将軍に捕まっているなんて思いもしなかった。明らかに彼女に惚れ込んでいるグレイにとっては悩みの種がつきないことだろう。そして昨日もまた、気づかないうちに彼女はどこかへ消えてしまっていた。だからきっと探しに行ったんだろうな。ならハッピーは?
 そう思った瞬間、バタンと大きな音をたててギルドの扉が開いた。あまりに突然のことに、気持ち良さそうに眠っていた面々も飛び起きる。ナツに至っては「誰だコラァ!!!」と火を吹く始末。しかし扉を開いたのが誰なのか分かった途端ぴたりと動きを止めた。

「ナツ、ミラ、ルーシィ…マスターはどこ!? キィナが、キィナが…っ!!!!」






 ハッピーに言われて袋に入れた魔封鉱石を手に走るマスターに、最高速度以上で飛んできて動けないハッピーを抱えたナツ、騒ぎで起きてきたエルザと共に湖畔を走る。目的地の方向からは恐ろしい程の膨大な魔力を感じる。ハッピーによると、キィナの魔力が暴走してしまったらしく、今はグレイが一人で対応しているとのこと。私もナツもマスターでさえも何故そんな事になったのか全く分からなかったけれど、それを聞くやいなやエルザの表情が険しくなった。

「なんてことだ!! グレイだけで対応するなど、彼女の暴走を加速させるだけではないか!!!」
「だからこうやって、応援を頼んでるんだよ…」

 エルザの言う通り、前方から感じる魔力の増加はとどまることを知らない。しかしキィナたちのいる場所まであと少し、というところで、あれほどあった魔力が急に感じられなくなった。

「グレイ!!! キィナ!!! 無事か……!!!!」

 我先にと飛び出したエルザは突然口をつぐんだ。何、何があったの、と続いて前を見ると、見るも無惨な姿になった木々の残骸、抉れたような形跡を幾つも残す岩壁、パタパタと風に揺れるキィナの白いローブに、傷一つなく凛として立っている白い十字架。そして…

「おう…なんとか、な……」

 湖の畔に座る全身切り傷だらけのグレイが、壊れ物に触れるように大事そうに、気を失ったキィナを抱えていた。









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