FAIRY TAIL

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 アースランドのやつらがエドラスにやってきて早三日、も終わろうとしている。外はもう足元も見えないほど暗いというのに、ギルドはいつも通りの程よい騒がしさに満たされている。

「珍しいわねグレイ、ジュビアと仕事に行かなかったなんて」

 カウンターに座っていると目の前にコトンと置かれたコーヒーのマグ。ふっと顔を上げるとミラちゃんの哀しそうな笑みが目に映る。

「何でミラちゃんがそんな顔してるんだよ」
「グレイが哀しそうな顔してるから」
「……」
「キィナちゃんのことでしょ、そろそろ一年経つし…」

 顔に表れそうになる苦笑いをコーヒーに口をつけて紛らわせる。ミラちゃんに図星をつかれて反論すらできない。というか、あれからもう一年になるのか。

「時間が経つのって、早いんだな」

 キィナがいなくなってから一ヶ月ほどは、ろくに食事もせず家にこもっているばかりだったか。ジュビアに叱咤されてギルドに行くようになって、涙こそ出なくなったけれど、オレの中の時間はあれから少しも動いていない。楽しい思い出もたくさんあったはずなのに、浮かぶのは目前に広がる赤ばかり。
 遮るようにもう一口、とマグを傾けた瞬間、バタンと勢いよく扉が開いた。突然のことに驚いたオレはカウンターに中身をぶちまけてしまった。いそいそと布巾で拭いていると今度は耳を裂くほどの叫び声。

「みんな、聞いてくれ!!! 話があるんだ!!!」

 振り返った先には真剣な顔をしたルーシィ。何事だ、と皆が注目を集めるが、なぜかルーシィは周りをきょろきょろと見回している。

「は? トラキオン? …あのやろう、どこ行きやがった!?」
「ルーシィ、トラキオンって誰だ?」
「キィナだよ!!! アースランドのキィナがギルドに行きたいって言うから連れてきてやったのに…どこ行ったんだよ!!!」

 途端、静まりかえった酒場。オレは持っていた布巾を取り落とし、パサリとカウンターに落ちた布の音がいやに響いた。

「アースランドの…キィナ……?」









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