FAIRY TAIL

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 私たちがハッピーとシャルルと一度別れてから向かったのは、女王シャゴットの城だった。
 女王といっても、人間や一般のエクシードたちが考えているような大層な力はない。ただ、少しだけ先を見る力があるだけ。昔から人間たちに酷い扱いを受けてきたエクシードは、自らを守るために、そして自信を取り戻すために人間にもエクシードにも、女王に神の力があると思わせた。
 当然、ただそう伝えるだけなら誰も信じるはずはなかった。エクシードには力があると、何かの形で見せつけなければならなかった。そこに協力したのがエリュシオス家――私の先祖だったのだ。魔法道具の発明をしていたエリュシオス家は、強力な魔法を各地で見せつけては「エクシードの力だ」と触れ回った。代々の女王の予知能力による後付けの人間管理も相まって次第に信じる者も増えていった。

 完全に人間とエクシードの立場が逆転した頃、エリュシオス家は魔法道具を作るのをやめた。代わりに、人間管理と称されて、亡くなった人たちの供養をする儀式を執り行う形で、エクシードの権威に貢献し続けた。それが一年前までの、私が軍に殺されたとされるまでの話。

 今ならわかる、両親はただ「王子を逃した」というだけで死罪になったのではないと。国王が作り出すアニマを、王子はアースランドから閉じてまわっていたのだ。つまり国王に対する反逆である。それに加担した両親は同罪。巨大な魔水晶が現れなければ、ハッピーたちが来なければ、この真実にたどり着くことはなかった。そしてこの事実を公開することなく、エクスタリアは滅んでいただろう。

「これ以上は無理です、女王様!!! 国民に全て打ち明けるのです、今がまさにその時なのです!!!」
「ですがウィステリア……」
「まだ迷っていらっしゃるのか!!! この国は、エクスタリアの民は、あなたにとってしょせんそんなモノだったのですか!!!!」
「口を慎まんかエリュシオス!!!」
 
 だが議論は平行線。混乱を恐れ消極的な女王は中々腰を上げてはくれない。
 大きな衝撃があったのはそんな時だった。長老たちがオロオロと慌てふためいたり互いに抱き合ったりしている中で、女王は諦めと覚悟の混じった表情で台座に座ったまま。城のどこかがやられたのか、パラパラと小さなカケラが少し落ちてくる。

「もう、いい。私だけでもいってきます。ただ一つだけ」

 立ち上がり、ホコリを払う。ウィステリアも立ち上がる。じっと台座から動こうとしない女王に、まっすぐに視線を向けた。

「あきらめるのは、まだ早いんじゃないですか」

 一礼して、顔を上げると同時に走り出した。開け放たれた大きな扉をくぐり、ウィステリアにつかまって空を縫ってゆく。その途中で見つけた、群衆と人間と、白い影。飛び降り、抱きしめ……

「もういいのです、ナディ」
「女王……?」

 そして、今にいたるのである。









 
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