FAIRY TAIL

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 押しても押しても、一向に止まる気配はない魔水晶。むしろ加速しているかもしれない。ふんばれと言ったはいいが、内心これは厳しいと思いはじめたその時だった。

「シャルル!!」
「私はあきらめない!!! 妖精の尻尾もエクスタリアも、両方守ってみせる!!!!」

 突然浮遊島にぶつかってきた小さな影をはじめ、たくさんの羽ばたきが背後から聞こえてくる。

「自分たちの国は自分たちで守るんだ!!!!」
「危険をおかしてこの国と民を守り続けてきた女王様の為にも!!!」
「みんな!! 今はこれをなんとかしよう!!!」

 思いが思いを呼び、何百何千と島に集まる。背中を押されるように、オレたちにも力がわきあがってくる。

「止まれぇぇぇぇーっ!!!!」
「みんながんばれー!!!」
「お願い!! 止まってぇぇっ!!!!」



 腕から力が抜け、踏ん張っていた足が島から外れる。反動で落ちる所をエクシードに助けられた。前を見ると、ゆっくりと、エクスタリアから魔水晶が遠ざかっていく。そして一瞬カッと瞬いて、大きな音がしたかと思うと、巨大な魔水晶が跡形もなく姿を消していた。

「魔水晶が消えた…!?」
「ど…どうなったの!?」

 戸惑いの声で溢れる中、頭上から声が響いた。

「アースランドに帰ったのだ」

 そこにいたのは全身を覆い隠したミストガン。元に戻すためにアニマの残痕を探していたという。向こうに戻れば、街は元通り。人々も何事もなかったように生活を送る。

「リリー、君に助けられた命だ…君の故郷を守れてよかった」
「ええ…ありがとうございます、王子」

 …ちょっと待て、ミストガンが、王子だと?

「そして君と両親には本当に申し訳ないことをした、キィナ」

 その名前を聞いて振り返らずにはいられない。どういう事だ、ここに来る前に、ルーシィはエドキィナはもういないと言っていたじゃないか。ルーシィを見ると、口を開けたまま動かなくなっていた。

「自分勝手なことではあるが、君が生きていてくれて良かった」
「王子こそ、お久しぶりです。任務を終えられたのですね」

 白と朱の装束に、鈴のついた白黒黄のリボンで髪を一つにまとめたキィナが、藤色のエクシードにつかまってミストガンの前にいた。

「エドキィナ!!! 生きてたの!!?」
「あい、でもオイラたちが見た時はエクシードだったんだけど…」
「変身魔法を使ってたのよ、さっき女王に解除されたみたいだけど」
「ルーシィさん…? ハッピーにシャルル、え、エルザ…ああ、アースランドでは妖精の尻尾なんだったな。それと、ナツさんに、グレ、イ……?」

 なぜかオレだけマジマジと見つめられるのだが、これは何の処刑だ? なんて思っていたら、突然大声で、笑いはじめた。

「あっはっは!!!! グレイが服きてない!!!! 何だこれは、気味が悪いな!!!!」
「ちょっとキィナ!!! あの人はキィナの知ってる彼じゃないんでしょ、そんなこと言ったら…」
「あっ、ご、ごめんなさい……」

 藤色のエクシードにたしなめられ、見るからにしゅんとして落ちこむエドキィナに、オレは目を見張るしかなかった。いや、さすがに「気味が悪い」は堪えたが、キィナがこんなにも、笑って、落ちこんで、めまぐるしく感情を表している。オレにはそれが信じられなくて、声が出なかった。

 しかし、そんな時間もつかの間。一筋の光線が、リリーと呼ばれるエクシードの体を貫いた。

「まだだ、まだ終わらんぞーっ!!!!」
「え、る…ざ……」

 大量のレギオンに乗った軍隊が、オレたちを攻めてきた。





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