FAIRY TAIL
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「くそっ、どうやっても魔力が足りない!!! これじゃあ王都まで行けないよ!!!!」
ガチャガチャと装置を動かしていたエドレビィが音を上げる。準備はとうに終わって、士気も高まり、後は移動するだけというところで、今最大の壁にぶち当たった。ギルド内に焦りが広がり不満ばかりがつのる。
「本当にどうにもなんねーのか!!? ここの分のエネルギーはいらないだろ、このレバーをこうして…」
ルーシィが手助けに入るも、やはりどうにもならない。ここまで来て、私たちは何もできずにただ仲間が殺されるのを見ているしかできなくなるのか……?
そう思った時、ふと足元で微かな流れを感じた。魔力の枯渇のせいで今までよどんでいた地脈が、ほんの少しだが、動いた。まだ完全にエドラスの自然の魔力が失われたわけではない、もしかしてこれを使えれば、何とかなる、かもしれない。
『あの、私が…私が、手伝うから。みんな頼むよ、まだ見捨てないでくれ……』
一か八か。転送魔法装置の動力源の魔水晶を確認して、ゆっくりと地面に手をついた。静かになったギルド内の張りつめた空気を感じながら、魔法を、展開する。
『お願い…"後援"』
途端、大きな音を立てて電源が入った魔水晶。周りから一斉に歓喜の声が上がる。いつもなら手のひらいっぱいに溢れんばかりに流れこんでくる大地の力が、今は針金程度しか伝わってこない。それでも希望があるなら、私は諦めたくない。エネルギーをなるべく抵抗をかけずに、動力源に送り込む。
「だめだ、初動にはこれの二倍は必要なんだ、もう少し頑張ってくれ!!!」
「頼みの綱はあんただけだ、アースキィナ!!!!」
足りない、まだ足りない。ひたすらに取りこんでも、これじゃあいつまで経っても終わらない。もっと大きな、大きな力がほしい。みんなを助けに行けるほどの、大きな力が。
辺りの空気が徐々に渦を巻き、バチバチとどこからか電気が弾ける。周りの人は危険を感じたのか、私の半径数メートル以内には誰もいなくなった。
『まだ、まだ…エドラスだけじゃ足りない……』
深く息を吸って、エドラスのさらに奥深くまで意識を飛ばす。負荷をかけすぎているのか、両腕の所々に切り傷が刻まれ、床に鮮血が飛び散る。
「やめろ!!! いくらなんでもそこまですることはないだろ!!!! お前の身がもたねえよ!!!!」
横から風に混じってエドグレイの叫び声が聞こえてくる。そちらを見やると、彼は今にもこっちに走って来そうな勢いで、両脇のジェットとドロイに抑えこまれていた。
「無いものを引っ張り出すためにそんな無茶してたら、お前が壊れちまう!!! 死ぬつもりはないんだろ!!! だったら……」
『だったら何だ!!! 仲間を見殺しにして私一人だけのうのうと生きろとでもいうのか!!?
今無茶をして仲間が助かるなら、私はあきらめない!!!! 死ぬつもりはない!だけどそれ以上に、もう後悔などしたくないんだ!!!!』
もっと、もっと深くまで。地面を抜けて、あの雲の渦の向こうまで――アースランドまで。私を通って、仲間を救うための、力を。
『力を、貸してくれ…レア!!!!』
魔水晶が一層大きく震え轟き、辺り一面がまばゆい光に包まれた。