FAIRY TAIL

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「そのエクシードをこちらに渡せ!!!」

 男の野太い声が、私が彼らに追いつきつつあることを示す。まとまったものから少し外れた足音の焦り具合が尋常じゃなかった。乱戦の場を妖精の尻尾に任せ、足音を追ってみると、多い方は軍の連中だったらしい。

「……!!!!」
「黙れ!!!!」

 追われていた側の声はうまく届かない。だがようやく足音の主たちに追いついた時、白と朱の装束を着て縮こまった女性と、彼女に向けられる魔弾銃が目に飛び込んできた。兵の指先がトリガーを引こうとするのが見えた瞬間、私は木々の合間から飛び出した。

『"加護"!!!!』

 ふわりと金色の膜が彼女を包みこみ、魔道弾はあらぬ方向へはね返った。
 当然、軍隊の目は唐突に現れた私の方に向けられる。だが隊列を組んだ彼らは目を見開き、ちらちらと後ろを見やった。

「どういうことだ…同じ顔が、二つだと……?」

 重なるざわめきの中で、その声をはっきりと認知した。同じ顔って、まさか。真意を確かめるべく、軍をひと睨みして、真っ正面から突っ込んだ。
 次々と撃たれる魔道弾をスレスレでかわし、隊の先頭で思い切り地面を蹴った。ひらりと隊列を飛び越え、着地したその目前には……

『どうして…どういうことだ…おまえは、エドラスの私……!?』

 傷ついたエクシードを抱え、地面にしゃがみこむ、私の顔があった。

「あなたは、アースランドの私……? 驚いた、魔水晶と一緒に地上に帰ったかと思ってました」

 ぱっちりと目を見開いて驚きをあらわにするエドラスの私。確か感情をあまり表に出さないとかエドグレイが言ってたはずだが、状況も状況だし、昔からは変わったのだろう。人が変わるのには少しのキッカケがあれば十分…って、問題はそこじゃない。もういないと聞いていた彼女が、なぜ私の目の前にいる?

「総員、発射準備!!」

 ガチャリと弾が装填される音。振り返れば隊列を整え直した軍がこちらに銃を構えていた。

『今はそんな事より、走れ!!! ここは私が足止めする!!!』
「あ、ああ。助かるよ、向こうの私!!!」

 呼ばれ方が変な感じがしてくすぐったい。強引に腕を引っ掴んで立ち上がらせ、どんと背中を押した。幽霊みたいなもので掴めなかったらどうしようと思わないこともなかったが、しっかりと感覚が伝わってきた。ここがひと段落したら、エドグレイに伝えよう。いや、その前に私を探し出して事情を聞く方が良いか?

「逃がすな、エクシードと女を追え!!!」
『行かせるものか、意地でも止めてやる!!!』

 とにかく今はここを凌ぐしかない。幸いそんなに数は多くない。相手の人数を把握して、逃げた彼女を捕まえに走る軍を必死に追いかけた。





 
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