FAIRY TAIL
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エドラスの私の追っ手を全員のして、武器をとりあげその辺にあったツタで軽く縛りつけると、あちこちから鳥が羽ばたき、しっかり力を入れなければ立っていられないほどの大きな地鳴りが起こった。何事かと走っていって森を抜けると、空に浮かんでいた島々が次々に落下してきていた。
重ねて至るところから魔力が空に吸い込まれていく。エドラスから、ついに魔力がなくなる。どうしようかと迷っていると、ここからそう遠くない所の魔力が一際大きいことに気がついた。あの辺は確か、妖精の尻尾が突撃していった辺りか。行くか行かないか、なんて考える前に、体が動いていた。
『何だ…これは…?』
逃げ惑う王国軍、うろたえ呆然と立ち尽くす妖精の尻尾。
「大丈夫なモンか!!! この世界の魔力が消えちまうんだぞ、全部!!!! 魔導士ギルドはどうなっちまうんだよ!!!!」
エドルーシィの悲痛な叫びが離れたところからでも聞こえる。
「魔法が無くなる!!!! 魔力が消えていくー!!!!」
「もうダメだー!!!」
魔力を体内に持っている私たちには、これがどれほどの事なのかなんて決して分からない。
「助けてー!!!」
「オレたちはどうすれば……」
『うるさい…』
だけど、魔力より大事なものがすぐそばにあるというのに、どうしてそれに気づかないんだ? 魔力がなければ、築けないものだったのか…?
「世界の終わりだー!!!」
「エドラスの最後だようー!!!!」
『うるさい、黙れ!!!!』
叫喚は一瞬にして静まり返った。ハッとして向けられる視線。そのひとつひとつに、目線を合わせて静かに訴えかける。
『あんたらが国に追われてまで必死に守ったものって何なんだ、魔法か、魔力か? 違うだろ、「ギルド」はそういう存在じゃあないだろう?』
「アースキィナ……」
以前の私からは想像できない発言だな、なんて第三者目線を追いやりつかつかと進んでいくと、ばったり出くわす、懐かしい面々。
立ち止まりあっと口を開け、歩いていって、服を着ていないと手を伸ばして確認しようとして、自分が何をしようとしているのか気づき硬直してしまった。
「…よ、よう。久しぶりだな」
『こっこれはだな、あの、その……服を着ていないのがなんてしっくり来るんだろうって!!!』
「隣にいるぞ、キィナが暗に示してるんだろう人物が」
『あ、いや、違うんだ。その、えっと…すまない』
「ねえ、あたしたちもいるの忘れられてない?」
「あい」
なんて茶番だ。慌てて手を振り首を振り全否定。違うんだ、直接触れて確かめようなんて、そんな変態まがいの事思ってなんかいない!!
そんな事を考えていると、煌々と輝きはじめる私の視界。体が軽く感じられ、ハッピーやシャルルが翼を出していないのに宙に浮く。
「そっか…あのアニマはエドラスにある魔力全てを…つまりあたしたちも追い出すつもりなんだ」
ルーシィにならって空を見上げると、さっきは小さかった渦が大きくなって私たちの真上に展開していた。
「本当にこの世界から魔力が消えるってことなんだ……」
『まだそんなこと言って……』
「そんな顔するなよ」
私の言葉をはばんだのは、半裸のグレイ。任せとけ、みたいな顔でちらっとこちらを向いて続ける。また自称「名言」か?なんて呆れつつも、彼の言葉には心に響く何かがあるのも事実。
「キィナも言ったろ、ギルドってのは魔力がねーとやっていけねーのか?
仲間がいれば。それがギルドだ」
ふわりと私たちの体も宙に浮かび、ルーシィが涙ながらに手を振る。ふと重ね着のひどい彼を見ると、向こうもこちらを見てさみしそうに笑った。
『お別れだ、エドグレイ』
「ああ…色々とありがとうな、アースキィナ…最後にひとつだけ、良いか?」
『ああ、なんだ?』
「…笑ってくれないか。アースキィナが笑った顔を、まだ見てねえんだ」
最後になんてことを言い出すんだ、こいつは。笑い方なんて分からない、記憶にある限り笑ったことがないんだ、できるわけがない。
どうすればいい、人生最大の難題。何もできずおろおろと周りを見ていると、飛びこんできた亜麻色の髪と白と朱の装束。涙を流しながら抱きしめあう二人を見て、思わずふっと頬が緩んだ。
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