FAIRY TAIL
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「帰って来たぞー!!!」
「来たぞー!!!」
さっきまで大人しく酔っていてくれたのに、街に着くなり耳が痛い。今はあまり高いテンションにのれる気分ではない。
船上で始まった私の回想は、最初こそ穏やかなものだったけれど、崩れた建物、鼻をつく鉄の臭い、目前に広がる「赤」、迫る幾本もの腕――止めようとしても様々が頭を駆け巡り、その度に恐怖が募り、最早"余裕"どころではなくなってしまった。ナツ達の数歩後ろを歩きながら、自分の顔が無表情に固まっていくのがわかる。
「どーした、気分が悪いのか?」
いつの間に来たのだろう、グレイが怪訝な顔をして私の横を歩いていた。話しかけられるまで人の気配にすら気づかなくなるとは、今の私は相当隙ができているようだ。
「…いや、平気だ。何ともない」
内心かなり焦ったが、それを見せまいと平常を装ってみる。無駄な心配をかけてすまないな、と謝ると、グレイは少し表情を歪めた。何故、と首をかしげていると、聞こえるか聞こえないかという声量でぼそっと呟いた。
「辛いなら言えよな。仲間だろ」
衝撃。私の歩はそこでぴたりと止まる。言った当人はそれに気づかずそのまま彼の仲間の下へ歩いていく。
グレイは私を、仲間と言った。そうなってはいけないと自分を抑え、無愛想に振る舞う私を。どうして?ろくに魔法も使えない、加えて私のせいで皆を危険に晒しているというのに。私なんて、ただ足手まといなだけなのに。何故…?
…パシ。急に手を握られ落ちていた目線を上げると、ニッコリと笑ったルーシィの顔。ナツもハッピーも、エルザもグレイも、こちらを向いて、私が来るのを待っている。
「行こう、キィナ」
どうやら私は本当に意志が弱いらしい。まだもう少し、この声に、手に、笑顔に――この人達に甘えてもいいのだろうか。
答える人などいない。それが私を不安にさせるけれど、胸の奥に生まれた温かさには敵わない。いつかマスターの言葉を聞いたときに感じたものと少し似ている…この気持ちは何と言うのか、私はまだ思い出さない。