ハートの志(ONE PIECE長編、完結)
□二 光と闇
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白ひげ海賊団がこの島を旅立ってから早7年。
ローはと言うともうすっかり身長も伸び大人びていた。
この歳だからか、言葉遣いもどこかぶっきらぼうになった。かといってヤクザまがいな事はせず静かに過ごしている。
変わった事と言えば身長と言葉遣いだけだ。
ローは日がな一日本を読んでいた。
たまに家を出て行くかと思えば夜まで帰って来ず。母は一人ため息をついていた。
「父親に似たのかしらねぇ、あの性格。 いや私かしら」
父と母を混ぜ合わせた様な性格を持ち合わせていると言われるロー。今日はどうやら家で読書をする事にしたみたいだ。
その本は、母が昔良く読んだ本。好き好んで見ていた本では無いのだが、ローが好んで読んでいるかと思えば母は嬉しい限りだった。
「……なんだ、母さん」
数刻して。読んでいた本を閉じ目線を母に向けた。
先程から目線が痛かったローはとうとうそれを口に出した。
何をするわけでも無く、ジーッと見つめるその視線。穴が空きそうだ。
そんはローの問に、母は笑うだけで特には答えなかった。
「なんなんだよ……」
笑った後母は家事をしようと腰を上げた。その姿を見たローはまた手元の医学書に目を向けた。
以前母は医者であり、研究員だったようだ。部屋の本棚には医学の本がいっぱいあり、図書館のように敷き詰められていた。
でもこの本はほんの一部のようで、本当はまだまだあるらしい。
それしか教えてくれなかったが、ローはそのおかげか医者まがいな事はできるようになった。
流石に病院ではナイフを入れたりは出来ないが、その辺の……自らがやっつけた海賊やカエルやらを実験台にし技術を身につけていた。
白ひげに貰った刀はまだ背丈よりは大きいが、振りかざす位は出来るようになった。
ピラリ、と本のページを捲る音しか聞こえない家の中では静かなひと時が流れていた。
ーーー何時間読んだだろうか。ふと窓の外を見れば白い空が。
(……普通、空は白いだろうか)
目をパチクリさせたまん丸な白熊が、何故か窓枠に居た。
(……何だこいつ)
まずそれしか考えられなかった。外の白熊も目が合っただろうか、固まっている。
ちょうど母は洗濯物を干しにいっていない。
近くに居るのはこの白熊だけだ。
動物嫌いでは無いため、その珍妙な行動をしている白熊に近づく為、そっと窓に寄ってみた。
すると警戒心が強いのか。
物凄い早さで、森の方へと走っていった。
「……白熊。 一回抱いてみたいな」
何故逃げたのか。
まぁ野生だろうから仕方無いだろうが気になり、家には置き手紙を残し白熊を追いかけた。