ハートの志(ONE PIECE長編、完結)

□六 桜の都市
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今のところ順調に。ハートの海賊団はグランドラインを渡航していた。

数分前までは晴れだったのが雪に変わり。雪が嵐に変わったり。
気まぐれな天候を予想していなかったベポは、只今海中に潜っている船内で伸びていた。

現在は皆同じ場所に居る。
ペンギンは料理を、シャチは準備運動を。
そんな中ローは自室から持ってきた本を読んでいた。


「あれキャプテン、医学書じゃないの読んでる」


ベポは復活したのか、大きな体を起こし椅子に座っているローに寄って来た。
そして本を覗き込んでいる。
気配に気づきはしているローだが、本から目は離さない。


「わ、オレには読めない!」

凄い!と叫ぶベポ。
終いには拍手をし始めるベポに大きなため息をつき、本を目の前のテーブルに置いた。



料理を終えたのかペンギンが皿を手に持ち、キッチンから近付いて来た。
机に皿を数枚置き並べている姿を見たシャチはテーブルから離れていたが、匂いに釣られて走って来た。
そのシャチの姿に行儀が悪い、と頭を叩くとシャチは静かになる。

シャチの兄貴分的なペンギンは、この船ではシャチの嗜め役になっていた。



そんなペンギンも皿を並べ終え、椅子に座るとローの読んでいた本に目を向けた。
どうやらペンギンにもそれは難しいようで、首を傾げていた。


「船長はそれ読めるんですか?」

ナイフとフォークの音が鳴る中、静かに食べながらもペンギンは本が不思議に思うのか聞いて来た。
そう。はたからすればその本は暗号のようにも見える。



「微妙だな。読める所もあれば読めない所もある」

「多分それ、古代文字ですよね」

「多分な」

手に握り飯を持ったまま、ローは再び読書を再開した。


(どうゆう訳か、小さい頃渡されたんだよな。刀と一緒に)

常に持っているローの刀は、皆の話に参加するかのようにカタカタと鍔を鳴らした。




子供の頃、母に渡されたこの本。二歳だったローは何だか分からなかったがこの本の字を教えられた。
学ぶ事は嫌いではないロー。実際この歳から医学書を見ていたらしくて、母を驚かせたらしい。

しかし医学ほど勉強しなかった為、ある程度しか頭に入れなかったローは今復習をと、本棚から引っ張り出して来たのだ。


この本はどうやらローとベポが北の海から飛び出る時に忍び込ませていた荷物に、母は入れたらしい。


…とローはちょっとした昔話をすればペンギンも含め、皆がへぇーっと声を上げていた。





予想外の反応にローは目を見開かせるも、また本に目をやった。

「船長、とりあえずご飯を食べてから本読んで下さい」

覚めます、と。何やらペンギンは握り飯しか食べてなかったローを怒っているのか、ジーッと見ていた。


「……あぁ」


ペンギンの圧力に、その言葉しか出なかった。
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