ハートの志(ONE PIECE長編、完結)
□七 太陽みたいな色を
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あれから島を出たロー達ハートの海賊団は海上を航海していた。
皆には必要最低限の医療関係を叩き込み、後は好きな事をさせた。
大工とかを所望するかと思いきやペンギンに料理を教わる者、シャチに動力を聞く者、はたまた詳しく教えて下さいと医術を魂胆してくるクルーもいた。
将来優秀な助手が出来たと喜んだローは、基本をとりあえず教え今は甲板に出てベポを枕に寛いでいた。
天気も良好。
鼻提灯を膨らますベポを見ながらも空を見れば、一羽の鳥がローの目の前へと降り立った。
ニュースクーと言う首にカバンを下げ、新聞を配り回っている鳥だ。カモメの様な、シロサギの様な鳥はクー、と鳴きながらローに近寄る。
「おら、ありがとな」
チャリン、とコインを鳥の下げるバックに入れると颯爽と飛んで行った。
(あの鳥、一回触ってみてぇな)
動物好きなローはふと飛びだった鳥を見ながらも思った。
手にある新聞を広げる。
それには世界の情勢などが載っており、船の上では大切な情報源だ。手配書などもたまに入っていたりする。
「……お」
ヒラリと出て来た紙。
今回は一枚だけかと拾い上げたそれは手配書。
見て見れば笑顔の写真がそこには写っていた。
凶悪ヅラが当たり前の様に並ぶ手配書にしては随分幸せそうな顔。
麦わらを被った、Dの名前を持つ者。麦わらのルフィ。
名前を見た瞬間なんだか笑いが込み上げた。
決して声に出して笑わない笑い方。だが揺れる体に枕にしていたベポは気付いたのか、体を起こした。
「キャプテン、何か良い事あった?」
バサッと両手で新聞を広げるローの椅子になるように座るベポは、新聞の内容がよく見える状態だ。
とは言っても新聞の字はベポには頭が痛くなるようで、ただローを抱く様にしている。
「まぁな、世界が動きそうだ」
「へぇー…オレにはよく分からないけど」
「お前はただ黙って俺に着いて来い」
「アイー!」
そう言うともう寝るのは良いのかローの椅子になったまま新聞を読み終えるのを待っていた。
「船長ぉっ!」
ちょうど新聞を読み終えるタイミングを見計らったのか。
やけに気分上々な様子でジンが目の前に来た。
「あ、ジンなにそれ!」
「ふふん!つなぎ服なのだヨ!」
ジンはこの船に乗ってからは船長と呼ぶようになり、それに便乗しシャチまでもが船長と呼ぶようになった。
意外に手芸も趣味だったようで針と糸を渡せば簡単に服を作った。
手に持つつなぎ服と同時に自分にも作ったのか、早速白いつなぎ服を着ていた。
「上手いじゃねぇか」
「お、もっと褒めて褒めて!」
「調子に乗るな」
船に乗ってからは大型犬になったようだ。
あれ見てこれ見て、と色んなクルーに作った物を見せるもんだからバンがゲンコツをお見舞していた。
見せて満足したようなのか、ジンはまた別な場所へ行った。
「ベポ」
「ん?なに」
今だローから離れないベポはローに呼ばれて返事をした。
ローの手には一枚紙が握られており、それをベポに渡した。
「五百ベリーの賞金首だと、ベポ」
「わぁ、オレだ!いつのだろう!」
ベポは渡した紙を広げて見れば立ち上がり、喜んだ。
写真付きの手配書がもう一枚新聞に入ってたのだ。
「シャチん時だろ。今更だがな」
「わーい、キャプテンと一緒!」
床が抜けるかと思う程ジャンプしたベポはその足でシャチのいる動力室へと向かって行った。
椅子がなくなったローは甲板の柵にもたれ掛かりながらも、もう一度麦わらのルフィの手配書を見た。
(なんだか懐かしい感じがするが……)
手配書を見てそう感じるが、特に気にしない事にしてローはベポの走り去る姿を見て、自身も立ち上がった。