ハートの志(ONE PIECE長編、完結)
□八 明日の光
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ジリジリと照りつける太陽。ハートの海賊団の船は今、夏の海域に入っていた。
陽炎がアスファルトの上にではなく、海の上にでるものだから恨めしい。
と、そんな事を思いながらもローは船の甲板に居た。
船の上で数少ない日陰で壁に背を付け、いつも被っている帽子を横に置いてただぼーっとする。
そんなへばってるローの隣に何故だか最年少クルーが座っていた。
何してんだ。
言葉を出すのも面倒なローはただ隣で手を動かし作っている子供を見ていた。
「できた!」
「……?」
突然声を出すジン。何やら手には平らな物を持っており、高々と掲げていた。
「船長にあげるヨ!」
「……おぅ」
はい、と手に持っていた物をローに押し付けるように渡せば「バンの所行ってくる」と、元気よく走って行った。
ローは渡された物を改めて見てみれば丸い形のうちわ、だった。
何故か真ん中に「祭」の字が書かれている。
(何で祭?)
でもちょうど風が欲しかったローはそのうちわで仰ぎ、パタパタと音を鳴らせた。
次の島はリゾート地。
海軍も海賊も無礼講な、治外法権地帯の島。
この島には独自の軍隊が居て、海軍以下政府関係者は海賊が居ても捕まえられない場所だった。
よって海賊が溜まる場所。
しかし海賊が暴れられない程強い軍隊が居ると言われ、島人達も統括するための法律もあるらしい。
悪巧みしなければ楽園の島である。
そんな島に近づいているからか、浮き輪を準備したり水着を準備するクルーが多数。本当に海賊船かと思う程の浮かれ様だった。
普段なら体裁を入れる所だが、既に海域は治外法権区域に居るため好きな様にさせていた。
楽しそうにはしゃぐクルー達を日陰の甲板で見ているローはふと足音が聞こえ、顔を上げた。
顔を上げた先には、ため息ついたペンギンが居た。
「暑いなら部屋に居たらどうです?」
どうやらバテて居たのを分かっていたのか、ペンギンはローに水を差し出した。
水の入ったグラスを持つとローは一口含んだ。
「部屋だと熱が籠ってて暑いしな。一人で冷房使うのももったいねぇ」
「船長、地味な所で節約家ですね」
「うっせぇ」
また一口。氷の音が響き太陽に反射する水が眩しいと思いながらも、またうちわで仰げば微風が髪を揺らした。
「ペンギン、お前は水着とか準備しねぇのか?」
ただ突っ立って居るペンギンに暑そうだからとうちわを貸してやれば黙って受け取り、ジッとローを見た。
「俺は泳ぎませんよ」
「なんだ、泳がねぇのか?ペンギンなのに」
「ペンギンなのに、てあなたが付けた名でしょう」
全く、と呟いたペンギンはまたローにうちわを返すと、歩を食堂に向けた。
何やら皆のドリンクを作るとかでハートのコック総出で作っているらしい。
(意外にペンギンも楽しんでるのか)
船が向かう先のログは三日。
程々に楽しめるか、とロー自身もとこか楽しみにしながらも日陰で一眠りしようかと目を閉じた。が実際の所、クルー達のはしゃぎ声で眠りはできなかったローであった。