ハートの志(ONE PIECE長編、完結)
□十八 風前の灯火
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自室に戻り。ローはベッドではなくソファーに腰を掛ければそのまま体を倒し、横になった。
余り使われていないベッドは今日も綺麗でシワ一つ無い。
そんなベッドを使わないなど勿体無い気もするが、適度に寝れるソファーがローにとっては丁度良く。
暫しの眠りについた。
「キャプテーン、キャプテーン」
「あ、何だ?」
ベポの目覚ましのような声が聞こえ、ローは顔だけ横に向ければ。
ドンドンと扉を叩く音がし、その反動からか扉が小刻みに動いており。
下手すれば壊れるので入れ、と促せばベポが自室の中に入ってきた。
「キャプテン、手紙」
「手紙?」
ベポは両手で持っていた小さめの白い封筒をローの前に差し出す。
それをローは横目で見て、寝そべっていた体を起こし片手で受け取る。その封筒の裏を見れば、MARINEと書かれてありその上にはカモメのマークまであった。
ビリッと音を立て封筒の上を破れば中に入っている紙を出し。開いたと同時に招集状、と書いてあった。
「チッ、面倒だな」
「……海軍?」
「あぁ」
ソファーの手前に座り、覗き込むように見てくるベポの頭を撫で。
朝から嫌なもの見た、とローは怪訝になりながらも。
手紙をもう一度ベポに渡せばキョトンとしながらもそれを黙って受け取っていた。
「行くの?」
「最初くらい行かないと煩いだろ、いきなり称号剥奪なんざ最悪だからな」
ローは高慢な動きで立ち上がり、自室にあるクローゼットまで歩いて行けば。数枚ある服の内から適度に取り出し、それを着ればまだ床に座っているベポに近寄った。
「海軍本部に航路進めると言って来い、ベポ。それで着いたら知らせに来い」
「アイアイ!」
ローの言葉にベポは頷けば。
早く行かねばとばかりに自室から出て行き、扉の閉める音が響いた。
「……ていう事だ。お前は白ひげんとこ帰れ」
ベポが居なくなったのを見計らい、ローはソファーの後ろに向かって声を掛ける。
ピクリ、と空気は揺れたが返ってくる言葉はなく。ローが一人で喋っているようにも見えるが、一人ではない。
「……ROOM」
「ぎゃぁ、ちょ、変な能力使うな!」
「使ってねぇよ」
出る様子の無い相手に、ローは半透明の膜を出そうとしたがそれより先にソファーの後ろから顔を出し。慌てふためくエースの顔があった。
「な、騙したか!」
「自分で引っかかったんだろうが。大体人の部屋忍び込むな」
「む!」
ガキか。
そう考えながらも開けっ放しにしていたクローゼットに近寄り戸を閉め、丁度真横になったエースを見る。
床に胡座をかき、テコでも動かない気なのか。ジィッと見つつも両者の間には沈黙が続いた。
「……親父には放浪してくるって言ってきた」
「あぁ?家出か」
「違ぇ、親父の代わりに探検だ!」
「変わらねぇだろうが」
先に沈黙を破ったのはエースだったが。海を探検すると称した家でにローはため息を吐き。
白ひげはどう思ってるのかと気になったが、多分。笑いながら家出させたのだろうとすぐ結び付いた。
新聞で見た限り、白ひげ海賊団は壊滅したと記載があった。
白ひげ死亡との内容が無かった為大方どこかの島で身を隠しているのか、コッソリ活動してるのか。
知る由も無いが、エースの反応を見てどこぞで身でも隠しているのが有力とローは考えた。
(しかし、本当に居座る気かこいつは)
何故か頬を膨らましているエースに、もう一度ため息をついた。
「……海軍本部出て、次の島に着いたら降ろすからな」
海賊団でも何でも勝手に作ってやれ。
そう言ってローは自室から出れば、出た後の中からは驚いた声が飛んできた。