ハートの志(ONE PIECE長編、完結)
□一 Octoberのソラ
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男の子はそのうち、ローという名前を付けられた。
ローが三歳になった時に姓がトラファルガーというのも分かった。
綺麗な母がそう名乗っているから。
ローは幸せな時を過ごしている筈なのに、どこか尺然としなかった。
洋風ながらもどこか古風な家。家具も立派ながらも電気みたいな製品が無い事。
何かが抜けているような感じがしていた。
「ロー、どこ居るの?」
ふと母の声がした。声の方に顔を向けると台所で何やら作っている姿があった。
「あ、そこにいたのね」
母は少し背伸びをした状態で前屈みになる。
対面式の台所の壁にローはくっついていた為、背丈の小さいローにとっては巨人に見られている様な感覚になる。
母はニコリと笑った顔を見せるとまた再び料理をし始めた。
父はローが産まれた後、家には居らず。その為か顔さえ浮かんで来ない。時折くるおじさんが居たが、母だけが親と認識しているローは今人見知りの時期だった。
母以外の者が近づくとふいっとそっぽを向き、自分より大きなぬいぐるみを抱き寄せる。
母が仲良くしなさい、と言われても素知らぬ顔を通した。
でもこの時、手の掛かる子だとも思わせたくなかったローは進んで家事の手伝いをした。
とは言ってもまだ小さなローはテーブルを拭いたり、軽い料理を運んだりするだけなのだが。
それをするだけでも、綺麗な母は笑ってくれた。
そんなある日、ローの家に年配の男が一人現れた。
ローは男の大きさに目を見開いた。
「………でかい」
思わず出た言葉がそれで、母はあたふたしていたが大きな男は地震が起きるかのような笑い声を出していた。