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□愛の定義
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「赤司くん、」
愛の定義って、何なのでしょうね。
黒子は、急にそんなことを言った。
「…何時も一緒にいること」
俺は生憎人を好きになったり、愛したことがない。
――黒子に出会う前までは、の話だが。
一目惚れだった。
だけど、愛の伝えかたが分からない。
愛の伝えかたが分からないのなら、愛の定義なんて分かるはずもない。
黒子はふふ、と少しだけ笑って、
「赤司くんにしては、いたって普通の回答ですね」
と言った。
「…じゃあ黒子は何だと思うんだ?」
少しムッとしたが、表情には出さない。
黒子は質問を返されたのに驚いたのか、きょとんとして、また少しだけ笑った。
「そうですねぇ、」
僕が思うのは、と黒子が続ける。
「想いを決して伝えずに、ひっそりと感情を押し殺して、その人の幸せを願うことでしょうか」
黒子の言っていることがよく分からなかった。
「…なぜ想いを伝えないんだ?」
「相手の幸せが、自分の考えている幸せと同じだなんて有り得ないからです」
俺が思ったことを聞くと、黒子はそう答えた。
「だが、想いを押し殺すなんてそう簡単に出来るものではないだろう」
俺が反論すると、黒子は
「そうですかねぇ。好きな人になら、いくらでもできるのではないでしょうか?」
と答えた。
僕は反論ができなくなった。
黒子が言っていることが、少しだけ、理解できたから。
沈黙が部屋を包む。
暫くして、黒子が口を開いた。
「赤司くんは本当にすごい人です」
「え?」
そして黒子は更に言葉を重ねた。
「…僕は、赤司くんの幸せを祈っていますよ」
「……なにを言って、」
そこで気付く。
――あぁ、黒子。お前はどうして。
「……もっと素直に言えないかな…?」
まったく。
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