読
□夜桜
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夜桜
――春、まだ肌寒い夜に土方と高杉は夜桜が咲き乱れる公園に来ていた。
「…随分と立派な桜じゃねェか」
風流を一番に愛でる高杉はふわりと微笑んだ。
土方はそんな高杉の横顔をチラッと見てから頷き、高杉の肩に寄り掛かった。
「……あァ、キレイだ」
二人は夜桜の下に座り、肩を並べて春風に靡かれて舞い落ちる桜花びらを黙って眺める。
その間、高杉は綺麗な透き通る低音を風に上手く乗せて歌を口すさんでいた。
土方はその透き通る歌を目を閉じて聞き入る。
「……ふふ…」
「ん…?どうした」
「ん、いや…お前と桜、一緒に見れて嬉しくてな…」
「…十四郎」
いつもは眉間に皺を寄せ鋭い双眸を投げ飛ばしている目許を緩めて土方は嬉しそうに頬を染めて笑った。
高杉は頬を染める土方の顎を掴んで自分の方に振り向かせると触れるだけのキスをした。
「ん…」
土方が目を瞑ってキスを受け入れて高杉の首に腕を回す。
「んン、ふあ…」
ちゅっ、とリップ音を立てて高杉は唇を離した。
「…このまま、抱きてェところだがお前が風邪を引いちゃ敵わねぇ」
「ふふ…そうだな」
二人は微笑み合って肩を寄せ合って桜を再び眺めた。
end