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□人を愛すのに、理由はいらない
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人を愛すのに、理由はいらない
最近、付き合っている奴がいる。
それはもう、世間には認められない奴だし、なんと言っても同じ性別だ。
だがそんな小さいことなんか俺は気にならない。
あいつを愛すのに、世間の目なんか気にすることじゃない。
俺が付き合っている奴は、幕府に追われいる凶悪テロリストの高杉晋助だ。
出会いはいつだったか、忘れてはいないが可笑しな出会いだった。
休日の昼前に一人で(本当は総悟も一緒だったがいつものようにサボりやがった)仕事をしていたら高杉が堂々と街中を煙管を燻らして歩いていたんだ、俺の前を。
その堂々とした高杉が逆に可笑しくて捕縛すんのも忘れて呆気にとられて吹き出してしまった。
すると高杉は吹き出す俺に漸く気付くとこれまたフレンドリーに、
「真選組鬼の副長じゃねェか、こんな良い天気にまで仕事とは…ご苦労様」
と、カラカラ笑いながらほざくモンだから俺は高杉を捕まえる気なんて更々起きなかった。
仕事増やしてンのはてめぇらの所為なんだけどな、と文句を言いたかったがあえて言わなかった。
「どうだい、一緒に呑まねェか?」
酷薄に笑いながら、馴れ馴れしくそう言った高杉に俺は面白半分で頷いた。
や、もう、なんか別にどうでもいいや。
攘夷志士だの真選組だの…んな、まどろっこしい話は考えたくない。
真選組屯所に帰れば仕事をしない上司がいるし俺の首を狙っている後輩はいるし…ちょこまかと仕事を増やす奴は大勢いるし…あァ、考えるだけで頭が痛い……。
少しぐらい、息抜きしてもバチは当たらないよな…?
end