□喧嘩する程、仲が良い
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喧嘩する程、仲が良い




いつものように銀八が職員室の自分の机で大好きな糖分を幸せそうに食べていると、彼の生徒の一人が職員室の引き戸を叩いた。


「先生ー、またあの二人がケンカしてますー」


「……またあの二人かよ」


銀八は溜め息を吐くと名残惜しそうに糖分を置いて自分の教室に行くべく、重い腰を持ち上げて職員室を出る。















「、で?」

銀八は目の前でボロボロになっている生徒二人、高杉と土方を腕を組みながら見下ろして状況の説明を求めた。


「今度は一体何が原因なの?」

「高杉が鼻で笑うから」

「土方がバカ過ぎるから」

何とも下らなすぎて銀八は何も言えなくて深い溜め息を吐く。

この二人は高校始まって以来、会った途端にケンカして暴れる問題児であった。
口喧嘩ならまだマシな方だが、そんな可愛いもんじゃない。

怪我人はまだ出ていないものの二人のケンカは殴り合い、蹴り合い…チンピラも顔負けする程本気で相手を打ちのめすつもりで暴れるのだ。

そんな問題児の高杉と土方は1位2位を争う程の優秀な成績である。
校内暴力とか、全く問題は起こさないのだが互いを見ると直ぐに手や足が出る事に先生方は頭を抱えた。

女の土方はその容姿から男女からも人気が高く、成績優秀運動神経抜群に容姿端麗で心優しい真っ直ぐな性格なのだがその容姿からは信じられない鋭い目付きや放たれる暴言と反射神経と運動能力を高杉に向けて発揮させる。

その反対の高杉も土方と右に同じく、成績優秀運動神経抜群容姿端麗で完璧とも言える。
性格は少し病んではいるが真っ直ぐな心とずる賢い頭脳にミステリーな雰囲気が密かに女子には人気だった。

そんな二人は何故かすこぶる仲が悪い。

何がそんなに気に食わないのか、分からないが暴れるのだけはやめて欲しい。


「はぁ……もう何度も言うがケンカすんなって言ったろ?高杉、大串くんは仮にも女だから顔を傷付けないよう少し手加減してやれ。それに土方も女だから大人しく座ってろ!!ホントお前らはもうケンカばっかりだわ、犬猫でもこんなにひどくねェぞ」

注意するも、二人は銀八の話なんか聞いておらずお互いを睨んでいた。

胃が痛み始めて不意に足下を見れば土方が高杉の足を踏んでいて、高杉はそんな土方をつねっていた。
小学生みたいなやり方に銀八はまた溜め息を吐いた、もうなんでもいいよ…。


「…もうケンカすんなよ」

「てめぇ俺の服汚してんじゃねェよ!」

「うっせェ!お前だって私のことつねってんだろ、痛ぇんだよ!!バカ杉!」

「何だと?!」

やはり聞いていない二人。

銀八は胃が更に痛むのを感じた。
もう言った側から…なんでこう仲が悪いんだよ、ちったぁ仲良くしろよ…。

と、傍観的に内心呟くと二人のケンカはエスカレートしていく。

口喧嘩から二人は殴り合いになっていき、拳を振るってはいなし、いなしては蹴りを入れる、と過激になる。



「……はぁ」

「ちょっ、先生?!止めて下さいよっ!!」

「…あー、もう無理無理」

「諦めないで下さい!!」

地味メガネ、新八が声を張り上げるが銀八は諦めているのか止める気配がない。






――――、

それからというものは高杉と土方は気が済むまで殴り合った。

クラスメイトはそんな二人を遠巻きに教室の隅で避難しながら黙って眺める者や気にせず爆睡する者、ジャンプを読んでいる者に二人の格闘をハラハラと心配そうに見ている者もいた。

二人は気が済むと自分で荒らした教室など、どうでもいいというように各自自分のカバンを持つと教室を去って行った。

そんな二人に銀八は溜め息を吐いた。


「……ケンカするクセに一緒に帰るんだよな、あいつら(呆)」

「本当ですよね、仲悪いんだか良いんだか、分かりませんよね」

二人が出ていったドアを苦笑いで見つめながら新八も頷いた。

















昇降口で靴を変え、二人は学校を出ようとゆっくり足を動かしながら歩く。

「あー…口ン中切った…」

高杉がしかめっ面をしながら口の端についている血を舐めた。土方は立ち止まると高杉の裾を掴んで立ち止まらせると口ン中を確かめる。


「あ、本当だ切れてる」

「っ…痛ェ、よ…」

「治してあげようか?」

いたずらっ子のようにニヤッと土方は笑い、高杉の唇に噛み付いた。


「んンっ!?」

口の中の傷を丁寧に舐める土方に高杉は痛そうにしかめっ面を更に歪め、されるがままに大人しくした。

痛いのを我慢していると満足した土方はぷはっと唇を離した。



「…っ〜〜〜〜!」

「治ったかよ、高杉」

顔を歪める高杉を土方は満足そうに見返して問い掛けた。すると高杉はムッと眉間に皺を寄せて土方の腕をグイッと引っ張ると仕返しとばかりに傷が痛むのを我慢して土方の口ン中を犯す。


「ふ、んンっ…!」

唇を割って中に舌を滑らせ、歯並びをゆっくりとなぞり舌を強弱で吸い絡める。

「んン、ん…っ」

土方は高杉の舌に必死についていくのが精一杯で腰が抜けそうになり、力強く高杉のワインレッドシャツを握った。

そんな土方の腰を支えながら高杉はトロンととろけている土方の唇から舌を離した。

「あ、っ……」

「ククッ…大丈夫かよ」

「っ〜〜〜!!」

高杉のバカにしたような言い方に土方は頬を紅く染めて悔しそうにシャツに顔を埋めた。
そんな土方を気にすること無く、気分が良くなった高杉は土方を軽々と抱き上げると足を動かした。


「…何すんだよ」

剥れながら高杉の首に腕を回す土方に高杉は機嫌良さそうに笑いながら言う。

「腰、抜かしたんだろ。俺が運んでやるよ」

「……当たり前だ」

高杉の肩に頭を落ち着かせながら土方は剥れながらも嬉しそうに頬を染めて笑った。



















「……………え、何やってんの、あの二人」

銀八が頬を引きつかせながら二人の背中を見送っていると、一緒にいた隣の新八と神楽が砂を吐きそうな勢いでうげぇっと顔をしかませた。



end

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