□雪
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ふと、肌寒さに目が覚めて起き上がる。

襖の向こうがひゅーひゅーと風の音で騒然としていた。


何気なく襖を開けてみると白い世界が海のように広がっていた。




「……雪…」



…寒いワケだ。


雪は既に高く積もっているのにそれを知らない雪は吹雪のように更に降る。

寒いと思いながらも襖に寄り掛かって流れ降る雪を静かに眺めた。


………この雪のように、この醜い腐った世界を真っ白に消し去ってくれたらいい……。


何も残らないように…。



…俺のこの苦しみも…―――――。
















「晋助ー…、って寒っ!?」


雪に魅入ってると十四郎が会議から戻ってきた。

横目に十四郎に視線を向けるが直ぐに白い世界に目線を戻す。


「今日は随分と冷えると思ったら雪が降っていたのか」

呟きながら十四郎が近付き同じように広がる白を眺めた。


「……晋助…」


十四郎を見上げると柔らかな笑みを浮かべて頬に触れてきた。
自分の冷たい手と違って温かい手に目を閉じて擦り寄る。


「…冷てェな、」

眉間に皺を寄せてそう呟き、俺の頬を両手で包み込んでから左手で後頭部に触れるとゆっくりと抱き締められた。

冷えた俺の身体を暖めるように、優しく…。



すると先程までに雪と同じように冷たく凍えていた心が溶けた。

小さな灯が灯り始めた心に気付くと自らも十四郎の背に腕を回していた。


「………十四郎…」


「…寒いから閉めよう、お前まで雪に連れて行かれちまう」


「……あァ」

頷いて十四郎が立ち上がると自分も立ち上が
って十四郎が白い世界を閉じた。



――――まだ、白く消し去るには早い……。







end

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